ブック・レビュー 神との関係の中で新しくされる


古川和男
日本長老教会 鳴門キリスト教会 牧師

神のなさることはいつも大胆です。とてつもない宇宙の創造。小さな人間が栄光の器となること。御子の受肉と十字架の死。愚かな者を選び、闇に住まわれ、破綻から永遠への道を始め、祈りがかなわぬことで心を満たし、悪をかなえて罰せられ……。神のなさることは奇想天外です。
ポール・ヤングの『神の小屋』は、大胆なキリスト教小説です。テーマは「赦し」と「神への信頼」。深い喪失と心の傷を負った主人公が、神に出会って、神との関係の中で新しくされていきます。帯に書かれている「神はなぜ『不幸』を見過ごすのか」という古典的な問いが、これまた古典的で正統的な答えから解きほぐされていきます。しかし、その状況設定が大胆すぎるほどに斬新で意外なので、ドキドキしてしまいます(ネタバレはやめます)。著者はあえて、こんな予想外の「神との出会い」という設定で、心に深く触れてくださる神を、豊かに、贅沢に、描き出してくれます。ありがたい読書体験です。七年前に出た邦訳は絶版でしたが、今回いのちのことば社から新訳版となっての再登場です。「解放」が「贖い」と訳し直されるなど、キリスト者の訳者ならではの息づかいがあちこちに感じられます。旧訳もよい訳でしたが、さらに自然で読みやすく、再度涙しつつ味わいました。特に、父親との和解、自責の念に心を閉ざしていた娘に「おまえのせいではなかったんだよ」と語りかけるくだり、神からの伝言(「私は君のことが特別に好きだと伝えてくれ」)を聞いただけで友人が歯を食いしばって涙を堪える場面、などは、胸が熱くなりつつ、自分自身が癒やされる思いをした箇所でした。
日本人も起用されて映画化と話題の本作です。脚光を浴びるでしょうが、神のわざはもっと秘めやかな、傷ついた中で、ひっそりとなされていると本書は教えます。三位一体の神が、大胆にも、あなたの「小屋」にもおられるのです。読み続けられてほしい、素晴らしい想像力豊かな、「癒やしの物語」です。
『神の小屋』
ウィリアム・ポール・ヤング 著
結城絵美子 訳
四六判 1,900円+税
フォレストブックス