ブック・レビュー 『小羊の王国』
――黙示録は終末について何を語っているのか

小羊の王国
宮村 武夫
沖縄聖書神学校 校長

『小羊の王国』への共鳴

 本書は、著者が遣わされた世田谷、神戸、東松山の教会で「黙示録」全体の講解説教をなしてきた、二十年の牧会生活から生まれたものです。その生活は、師を求めアメリカやイギリスと場所を変えながらも、一筋に聖書に聴従する一学徒への道でもあります。

 以下は、本書の明解な構造と豊かな内容です。

  第一章 麦と毒麦
  第二章 小羊の王国
  第三章 獣の国
  第四章 新しい天と地

 各章の関係も明瞭です。第一章を、第二節「麦」の成長と第三節「毒麦」の成長に分け、麦と毒麦の両側面、両者の関係を著者はバランスよく検討。そのうえで「麦」の成長は、第二章の「小羊の王国」で、「毒麦」の成長は、第三章の「獣」の王国でそれぞれ掘り下げ、私たちの牧会者は課題を正確にまた美しく展開します。第四章「新しい天と地」は、頂点。

 以上のように、本書は「黙示録」の終末論を主題にした、味わい深い書です。同時に、聖書をどのように読むか、方法論の基本を「黙示録」を実例に率直に提示しています。

 そうです。聖書を一側面からのみ読まず、両側面から注意深く読み続ける。聖書の一部だけを取り上げ、それがあたかも全体であるかのごとくに、「ここにこう書いてあるではないか」と人を煽らない。聖書を、細部に注意しながら、絶えず読み続け、聖書の全体像を次第に心に刻んでいただく営み。この実践の根底には、「黙示録の釈義と神学的議論の統合」(あとがき)を志す、著者の並々ならぬ深い思いを見ます。さらに自らの釈義そのものを絶対化し、神学的論議をあたかも聖書的でないかのごとく決めつける傾向の危険と幼さに対する危惧も伝わってきます。

「わたしは進歩しつつ書き、書きつつ進歩する人のひとりであることを告白する」先達と同じ道を歩む好漢に感謝。