ブック・レビュー 普段マンガを読まない人にも
おすすめなキリスト教入門書

 『マンガ 神なんていないと言う前に』
豊川 慎
聖学院大学総合研究所 特任研究員

普段「マンガ」を読むことが全くないため、書評依頼を受けなければ、本書も、その内容以前の段階で決して手にすることはなかったと思う。
書評を書くためにと読み進めると、これが大変面白い。無神論者と有神論者の会話がコミカルに描かれ、そこで展開される神存在論証の議論は説得力があり、マンガの絵の面白さがさらにそれを補っている。
本書は、生きることに虚しさを感じていた筆者のパク・ヨンドク師が、大学生時代に新たにキリスト教に出会い、大きく変えられ、他の青年や学生たちにもキリスト教の真理をわかりやすく伝え、説明したいという思いで書かれたものである。
著者によれば、神の存在を信じないと公言する無神論者であっても、神は存在しないという「信仰」を持っている。その意味では、誰もがある種の「信仰者」である。神の存在に関しても、第一章で、不可知論である仏教、儒教、汎神論であるヒンドゥー教、有神論であるキリスト教とイスラム教が紹介され、第二章以降ではキリスト教の神の存在が詳細に論証されていく。
第二章「キリスト教を遠ざける16の理由」、第三章「キリスト教の本当のすがた」、第四章「神がいるという2つの証拠」、第五章「救いへの第1歩」という構成である。
限られた紙数ゆえに内容の詳細は省かざるを得ないが、本書はキリスト教をわかりやすく伝えるのに最適な伝道書であり、キリスト教弁証論の書である。さらには、本書の深い読み込みにより、信仰の対象である神の存在を理論的に証明することがそもそも可能なのかという問いや関心を持つに至った読者をキリスト教思想史における「神存在論証」それ自体の学的探究に誘うことだろう。
本書には、学生伝道に長く従事してきた著者の伝道に対する熱き思いが随所に溢れている。キリスト教を初めて学ぶ高校生や大学生のみならず、キリスト教の入門書として、普段「マンガ」を手にすることのない方々にも広く一読をおすすめしたい。

『マンガ 神なんていないと言う前に
―キリスト教入門』
パク・ヨンドク 原作
クレマインド 文・絵
藤本匠 訳
A5判 1,680 円
いのちのことば社