ブック・レビュー 元気がしぼんでいるあなたへ「さあ、召し上がれ」

 『こころのごはん』
碓井真史
新潟青陵大学教授

朝のやわらかな日差しを浴び、さわやかな風にゆれるレースのカーテン。朝は忙しいけれど、朝ごはんは一日を支えるエネルギー。本書は、そんな美味しいごはんのような本です。
聖書のことばはすばらしい。でも、ちょっと近づきにくいと思っている方も少なくないでしょう。本書は、クロワッサンのように、サクサクっと食べられます。やさしく穏やかな文体。かざらない主婦の日常。下町の小さな教会の日々。聖書のことばを紹介しながら、大上段に構えない。正論で責めたてない。ページの一枚一枚が、やさしく軽やかにめくれます。クロワッサンは、外はサクサク、中はしっとり。毎日の生活の中に、みことばが根づいていきます。
でも、やさしいだけの本ではありません。著者の被害体験、聖書との出会い、癒し、結婚、新婚生活と異文化体験の戸惑い、新たな希望、傷ついた人々とともに歩むプロジェクト。やさしく、そして主とともに力強く。ああ、私もきっと乗り越えられると、読者は思えることでしょう。
本書のテーブルの周りには、いろんな仲間たちがやってきます。ムーミン、ハイジ、赤毛のアン、「よかった探し」のポリアンナや、ナルニア国の友人たち、時間泥棒と戦うモモ。さて、この子たちと聖書と現実の日常と、どのように絡みあってくるのかは、実際に本書を読んでからのお楽しみといたしましょう。
読み終わってみると、本書は炊きたてのコシヒカリのようにも思えます。しっかりとした満腹感。今日もがんばるぞと、元気な一日のスタートが切れそうです。
家事や育児に励む主婦に。ちょっとおしゃまな中高生の女の子に。そして、深く傷ついてきた女性たちに。日々忙殺されているビジネスパーソンに。元気がしぼんでいる現代社会に暮らす人々に。
『こころのごはん』さあ、召し上がれ。

『こころのごはん』
宮葉子 著
四六変型判 1,050 円
フォレストブックス