ブック・レビュー うつ病を祝福に、今日も生きる

『 あかるいウツのすすめ 』
佐竹 十喜雄
国分寺バプテスト教会協力牧師

「この本は明るくウツを生きるための手引きです」と書き出しているが、治療する側の人が書く教科書的手引きとは全く違う。著者は二十年以上うつ病患者として苦悩し、向き合い試行錯誤しながら、ついにうつ病との「平和共存の道」を見出し、うつ病から「卒業した」寛解(かん かい)者である。したがってうつ病の人が読めば「私と同じだ」とか「ああ、そう考えればいいのだ」などと気づかされたり、支える側の人にとっても接し方についてのコツを改めて教えられることが多いにちがいない。著者は勉強家で専門的知識に富み、論理的にまとめているので、専門家の副読本に使用することも可能である。
「初級篇 ウツを受け入れる」「中級篇 ウツを手なずける」「上級篇 ウツを楽しむ」の三部構成で、各項目は短文明解な解説とその項目にふさわしい自作の詩、さらなる理解のために参考本・音楽・映画などを紹介するというスタイルでまとめられていて読み易い。特に著者の心の叫びを詠った詩文は心に響いてやすらぎと深い洞察を与えてくれる。
   あなたはやさしい人だから
   すぐに傷ついてしまうのです。
   すぐにつらくなるのです。
   すぐに疲れてしまうのです。
   すぐに苦しくなるのです。  (初級篇より一部抜粋)

     病気のあなたの存在が
   わたしの心の支えです。
     あなたがいてくれるから  
   わたしもこうして生きているのです。
(上級篇より一部抜粋)
著者は、「苦しみの中にも意味があるとわかったときに、私にとってうつ病は呪いではなく、祝福に代わった」(一七七頁)と述べる。この洞察こそが執筆の動機であり、また読者に感動を与える理由である。うつ病患者を温かく迎え入れる教会となるために、本書の読書懇談会開催を提案したい。