ブック・レビュー 『教える喜びと学ぶ喜び』

教える喜びと学ぶ喜び
水草 修治
日本同盟基督教団 小海キリスト教会 牧師

知と愛と使命感

 この人に会えてほんとうによかった、と胸が熱くなるような出会いは、生涯、そう多くはないのではないか。筆者にとって朴永基師はそういう人である。師は殉教精神をもって知られる高麗派の宣教師として来日し、足立愛の教会、ついで新札幌聖書教会をみことばによって生み育て自立にまで導いて、今は次なる枝教会開拓を始めておられる。師が有能な宣教師であることは間違いないが、それ以上に師は深い愛の聖徒である。その人格のうちにはみことばに根ざす知性と深い愛と強烈な使命感とが共存している。本書はその伝道実践の成果である。

 入門者・洗礼準備者テキストである本書の特徴は、第一に、豊かな聖書引用にある。祈り深く本書を用いるなら、教える人も学ぶ人も相当量のみことばを味わう。結果、質実な聖書信仰が養われよう。

 第二の特徴は、求道者の霊的成長に基づく独特の順序。本書では「神、人間、キリスト、聖書、教会、救いの確信、聖礼典」という具合に、聖書論が中ほどにある。聖霊は、読者が神・人間・キリストについてのみことばを学ぶ過程で、読者のうちに「聖書は神のことばだ」という信仰を生み育ててくださる。その生きた信仰を、聖書論で確認するという意図であろう。この順序は、本書が机上の産物でなく、生きた伝道実践の産物であることのあかしといえる。

 第三に、本書最大の特徴は、神知識が、単に知識にとどまらずに、信頼と従順、喜びに満ちた使命感へとつながっていくと確信されていることである。神を知ることと神を愛することとのギャップの大きさを嘆いたのはパスカルであったが、本書においては知と愛とそして使命感が一つに結びついている。これはまさに著者の人格の投影にほかなるまい。