ブック・レビュー 『主の来臨を待ち望む37の黙想』

主の来臨を待ち望む37の黙想
池上 安
西日本福音ルーテル教会 新田キリスト教会 牧師

アドベント、クリスマス、キリストの王国到来に備えて

 慌ただしい師走を前に、キリストのご降臨に備える「アドベント」の時を過ごすために幸いな一書が出版された。これは好評の既刊『十字架の道をたどる40の黙想』(いのちのことば社刊)の姉妹書であり、「教会暦」に基づくみことばの黙想の書である。

 教会暦は一年を、キリスト待望にスタートし、主イエス・キリストの誕生と公生涯、受難と死、復活と昇天、そして聖霊降臨、続く教会の誕生とその宣教に当てている。古来あわせて、歴史的教会は、日々キリスト者がみことばの中心である「主」とともに歩むように、旧・新約の全聖書を通読してきたが、今日も世界の多くの教会が、聖書日課に従い礼拝をしている。

 著者も述べているように主日の礼拝において、わたしたちは「キリストの生涯の物語の新たなエピソードに」、「新たな物語に」参加するのである。本書において、イエスの物語をドラマとしてとらえる恵まれた著者の賜物がこの目的を十分に満たしてくれる。

 牧師を父に持ち、自らも米国ルーテル教会の牧会の経験を持つ著者は、幼い日から聖書の真実に養われた豊かな感性で、みことばのイメージを膨らませるが、神のことばである聖書への彼の理解と信頼は実に堅い。彼は読者を神の「パラダイム」に誘い、主と聖徒たちとの対話、神のできごとへの参加にあずからせる。旧・新約聖書のダイナミックな神の取り扱いに導き入れられ、胸躍る思いに満たされるのは私だけではないだろう。

 訳語、訳文も清廉で心地よい。黙想ごとに紹介される詩や祈りも、時と場を越えて心に染み、読む者の思いと口をついて出てくる。

 みことばの字義を探ることから、さらに行間を読み味わうことへ……。終末の様相を濃くする時期に、「主よ来たりませ!」と待望し、キリストを深く静かにお迎えする黙想の書として本書をお薦めしたい。