書評Books たゆみなき働きから語られた

日本同盟基督教団・五十嵐キリスト教会 牧師(新潟) 下川友也

 

『契約と贖いから味わう「神のことば」
    私なりの「十戒」』
赤江弘之 著
四六判・定価2,240円(税込)
いのちのことば社

著者の赤江牧師は、この書の執筆の動機をヨシュア記一九章であると言う。約束の地の十二部族への分配をひとしきり終えたとき、指導者ヨシュアにもゆずりの地所が与えられた。そのことが強く心に響いたと言う。

私の思うに、ここが赤江先生の“らしさ”である。普通この記事からの読者の感想は、ヨシュアも功なり名を遂げて、晩節をこの地でまっとうしたのであろう、と。だが、赤江師はそう読まない。ここからまた奮発して、生涯最後かもしれない執筆に拍車をかける。たゆみなく働き続ける師の真骨頂がここにある。

私が東京キリスト教学園の教師職十八年を終えて、北海道に向かう直前、最後の仕事は赤江先生を学園の理事長に強く推すことであった。ひきかえ、私は学園から解放されて日高に。師はいよいよ重責を担って岡山―学園を掛け持ち、のちに過酷な職務ゆえ、ステント二十本近くを体内に入れるほどとなる。しかし、その激務にありながら、真に安息を知る人であった。この点を第一に紹介したかった。

次には、十戒についての著作であるが、半数近い枚数を、十戒の前提としての、契約と贖いから味わう、という解説に用いている。赤江師から受ける一見した印象は、熱い伝道者、情の人である。だが、信仰の内側にしっかり据えられているのは、改革長老主義の神学であり、その教会形成は理路整然としたものである。十戒はそれゆえ、恵みの戒めとして読者に迫ってくるであろう。

幼児から、小学・中学生、現代っ子たちを実によく教会で育てておられる。その辺は、第四戒安息日規定の解説を見ていただくとよい。聖書の原則を崩さないで、それでいて現代の生活の中での適用を、教会の中で共に考えてゆく。

西大寺教会を中心に、教会が教会を産むという証しが見事であるが、その軸となるべき献身の器が続々と輩出され、日本の各地で、世界でと活躍しているさまは特筆に値する。
「ウエストミンスター、ハイデルベルクと並べて、赤江著作を!」と私が言うと、師はとんでもない、と断言されたが、あえて。