ビデオ 試写室◆ ビデオ評 95 『ほんとうにたいせつなもの』

「たいせつなきみ2 ほんとうにたいせつなもの」
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

「たいせつなきみ」の続編「ほんとうにたいせつなもの」が9/20完成!

 『たいせつなきみ』で日本でもすっかり有名になった絵本作家で牧師のマックス・ルケードの作品が、DVD化されました。内容は『たいせつなきみ』の後編です。

 『たいせつなきみ』の成功の背景には、能力によって人間の価値が比較される現代社会がの中で苦しむ人間の現実がありました。会社だけでなく公務員たちも、ずらっと成績順に貼り出される時代です。そして下の人は劣等感に悩み、自己嫌悪に落ち込みます。一方上の人は、いつ落ちるかという不安に駆られ、神経症に陥っています。その結果、競争が激しくなり、その国の国際競争力は上がります。しかし、そのために無数の人が病んでいるのです。そんな人々が『たいせつなきみ』を読んで、ホッとしたといいます。「私は、この私のままで、大切な人間なんだ」と思うことができたからです。

 それからエリの手伝いをするようになったパンチネロでしたが、ある日、誘惑に会ってしまいます。ここからが、この『ほんとうにたいせつなもの』のお話です。

 幕開けは、エリによるパンチネロの紹介。「この男の子は特別な子なんだ。なぜ私がそう思うかというと、このわたしが彼をつくったからだ。」

 エリからの呼び出しで出かけるパンチネロ。桶を頭にかぶって自転車で行く彼に、動物たちが歌います。ゴスペル風の男性コーラスで、「♪ある方がきみを、そのままのきみをつくったんだ。寂しくて、だれも助けてくれないときも、このことを忘れないでね」。パンチネロはすてきな笑顔で、とても楽しそうです。

 ところが、そのとき、ウィミック村では一つのことが流行し始めていました。きれいな箱とボールを集めることでした。皆が自分の持っている箱とボールを見せびらかして歩くようになって、比較しあい、「あの人は立派」「あいつはダメ」と評価し合うのです。ちょうど、ブランド品で虚勢を張り合う今の日本のようです。恋人や配偶者まで「人に見せて自慢できるか」で決める人もいる今の世界。それを鋭く風刺しています。パンチネロも巻き込まれてしまって、箱とボールのために、必要な物を次々に売ってしまいます。「本当に大切なものは何なの?」というルシアの声も耳に入りません。

 行くところまで行って、パンチネロはどんな姿になるのでしょうか?エリはそんなパンチネロをどうするのでしょうか?自分の欲望や虚栄心などの罪のゆえに失敗したとき、神様はどんな眼で見られるのでしょうか?弱肉強食の日本に急速に進んでいる今、すべての人に必要なメッセージが発信されています。