「原理主義」と「福音主義」 最終回 後退し続ける”閉じられた”日本の教会(後編)

宇田 進
東京基督教大学名誉教授 元ウェストミンスター神学校客員教授

 ここで、アメリカのファンダメンタリズムや福音派自身が、現在何を取り組むべき課題と考えているかについて注目したいと思う。

 たとえば、昨年三月に、『キリスト教神学』第一巻の邦訳出版を記念して来日されたミラード・エリクソンは、『福音派の知性と心』(1993)の中で次のような見解を主張している。 

 彼は、福音派やファンダメンタリズムに対する批判・不評の問題(例・テレビ伝道者たちの倫理問題や「ネオ・コン」との強い結びつき)と、一部の福音派に見られる現代文化およびこの世的なライフ・スタイルへの”順応”傾向や、福音主義の伝統的な諸教義の”再解釈”の動き(社会学者でヴァージニア大学のジェームス・ハンター『アメリカの福音主義─保守的宗教と近代性の当惑』1983と『福音主義─台頭しつつある世代』1987参照)を念頭に置きながら、具体的に次の点を提唱している。
  1. 1.キリスト教と世俗的文化との相違・対立の問題をさらにしっかりと掘り下げる。
  2. 2.何をもって”聖書的”と言うのかを、現代の神学思潮を注意深く考察しながら十分に検討・検証する。
  3. 3.そのために、聖書解釈学の確立が求められる。
  4. 4.人間中心主義と”ミーイズム”の時代の中で、真の意味での神中心主義への復帰と確立が必須の課題である。
  5. 5.個人・社会の罪の問題を真剣かつ誠実に受け止める。
  6. 6.不評・批判を真摯に受け止め、つねに成熟のための自己批判を忘れないこと。
  7. 7.自己の信仰告白とコミットする信念体系の真実性を再確認し、福音宣教につくす。
  8. 8.今一度、キリスト者としての自己のライフ・スタイルと霊性を点検し、同時に社会的責任を誠実に果たしているかを吟味・確認する。
  9. 9.ポスト・モダニズムを含む現代の諸思想と今日的な価値観の影響下にある教会の ”若年層”の信仰的コミットメントの維持・発展に、教会は特別な祈りと努力を傾注する。
  10. 10.福音主義キリスト教の ”ルーツ”とその”よき遺産と伝統”を再確認し、再強調する。
 われわれもこころして受け止めたいものである。