「アンクル・ジョン」とよばれた男 香港捕虜収容所通訳・渡辺潔の足跡

リアム・ノーラン
訳:菅野和憲

歴史に埋もれた知られざるストーリーが今ここに!

第二次世界大戦中、命を懸けて敵のために奔走した牧師、渡辺潔の半生を綴った感動のノンフィクション。
広島で牧師として働いていた渡辺潔は、香港捕虜収容所の通訳として召集された。そこで彼が目にしたのは、人間としての尊厳を剥ぎ取られ、劣悪な環境の中で十分な治療を受けられずに死を待つ捕虜たちの姿だった…。祖国と敵国との間で苦悶しながらも、潔は仲間の協力を得て、捕虜たちに医療品を届ける決意をする。それはクリスチャンとして聖書のことばに従い、自分のできる小さなことから平和をつくりだそうとする決意でもあった。
終戦後、捕虜収容所で生き延びながらも、潔は自身の家族を広島に投下された原爆で失うというさらなる悲劇に見舞われる…。
主人公が完全無欠な人間としてではなく、迷い恐れながらも神に従う姿が印象的!

本書は1965年にアイルランドのジャーナリストによって著された本の邦訳。歴史的に脚光を浴びることもなく、埋もれていた渡辺潔という人物の苦悩と奮闘を通して平和とは何かが考えさせられる。「わたしの兄弟たち、しかも最も小さい者たちのひとりにしたのは、わたしにしたのである」
[本文より▼]
イギリス人捕虜がむきだしにされた胸をベルトの締がねで打たれ、激痛で呻いたとき、もはやいたたまれなくなった潔は部屋から逃げ出した。急いで手洗い所にかけこんで、内側から錠を掛けて立てこもった。たった今見てしまった恐ろしい出来事から逃れようとして、目や耳をふさいだ。羞恥心と嫌悪、そして絶望で吐き気が襲ってきた。

潔はむせび泣く声を漏らすまいとして、ハンカチで口を覆った。「神さま、あなたは戦争を正当とされて、人々を戦わせているのですか? 神の御子であるキリストが人となって十字架上で死なれたのは、このためだったのでしょうか?」潔には答えを見出せそうになかった。そして、神への信仰さえ失ってしまうのではないかと思うほどの深い絶望の中で、自分を見失いそうであった。

潔は悪臭のする手洗い所に閉じこもってひざまずいた。たった今、見てしまった悲惨な光景と湧きあがった疑念をぬぐい去るために、神にすがりつくように語りかけ、必死になって助けを求めた。力と助けと理解力と、さらに多くのことを求めて、熱い祈りを捧げた。

そして最後にこう祈った。「神さま、私をお赦しください。私の弱さとふがいなさをお赦しください。冷酷なIをお赦しください。御子イエスは十字架上の強盗でさえお赦しになりました。どうぞ、何の価値もなく脆弱な私ですが、お用いください。神さまのいつくしみの器として、私の思いではなく、神さまの御意思が実現されますように……」†日々、さらなる精神的な苦悶を克服し、自分自身を内省し分析した末に、やがてはっきりとしたものが見えてきた。それは驚くほど明確に、二つのものが対峙していた。神なのか、祖国なのか。

潔はついに決心した。出した答えは一つであった。「わたしの兄弟たち、しかも最も小さい者たちのひとりにしたのは、わたしにしたのである」このよく知っている聖書の言葉は、牧師として、説教の際にこれまで幾度となく引用してきたし、これから先の指針となるだろう。その上、この聖書の言葉に従って行動に移っても、祖国日本への忠誠心を否定することにはならないはずだ。自分なりの小さなやり方で、飢えや病に苦しみ、死に直面している人々を楽にしてあげようと奉仕するだけのことではないか。言い換えれば、まっとうな人間であり続けるための努力目標であった。(本文より)

    【読者の声】渡辺牧師が生涯に出会われた家族との別れはどんなに悲しいことでしたでしょう。ニ度も家族をなくされたこと。捕虜のために尽くされたこと、その勇気…。再び、このような辛酸をなめずにすむように、戦争は二度とおこなってはなりません。(福岡県 60代 女性)命の危険にさらされることへの恐怖感をありのままに書いたこの本は、通常の伝記物を読んだときのそれとは違う、自分と同じ人間がそこに書かれている身近さを感じさせられた。(愛知県 40代 男性 会社員)この本を読んで、真実な主をより知ることができ、従っていこうという決心が強められました。主にすべての栄光と感謝をお捧げします。(20代 女性)なぜそこまでと理解に苦しむ日本軍の蛮行の中で、彼が神と日本を愛するがゆえに苦悶し、恐れと戦いつつ、忠実な人間であり続ける選択をくりかえしていく姿に何度も涙した。(東京都 30代 女性 教会事務)あの戦争の中でシンドラーや杉原千畝のように、香港で捕虜を救った人がいたのを知った時に慰められました。(福岡県 50代 男性 牧師)「神様がただ私を用いただけなのです。」クリスチャンの発言としてはめずらしくない一言が、こんなに重く聞こえたのはこの文中が初めてでした。(大阪市 30代 女性 会社員)戦争という極限の状況にあって生きた人々の信仰に魂が燃やされる思いです。(愛媛県 女性)十字架に従うとは、私たちも不遇の内に死んでも良いということだ。しかし、神は見ていてくださる。その希望が信仰だと本書を読んで思った。(東京都 50代 男性 牧師)渡辺潔氏のことはそれほど知られていないと思いますが、本書を通して、さらに多くの人にキリスト教精神のすばらしさが広がることを願っています。(徳島県 40代 男性 学習塾経営)

発行日:2005年08月15日
ページ数:
判型:B6変
発行:いのちのことば社・フォレストブックス
ISBN:978-4-264-02386-9
商品番号:12880
定価:1,650円(税込)

出版社倉庫在庫切れ