第1回 いのちのことば社絵本大賞 受賞作品

大賞受賞 1作品
『だれのて このて』文・絵 ホンダマモル

期待賞 2作品
『ソロソロさんのレモンの木』 文・髙田未羽 絵・山口新
『はかせとコッペのたび』 文・しのはらかもめ 絵・しんじはるか

★受賞3作品は、2021年「たいせつなきみブッククラブ」(月刊定期購読絵本)のラインナップに加わる予定です。詳細が決まり次第ご案内いたしますので、ご期待ください。

●総評
 募集から締め切りまで3か月という短い期間でしたが、個性的な力作20作品が集まりました。応募者の皆様に、心より感謝いたします。
 32頁の絵と言葉で何をどう伝えるか、アイデアやメッセージをどのように物語(テキスト)に落とし込んでいくのかに苦労があったかと思います。どの作品もそれぞれに長所がありましたが、メッセージが直接的なもの、作品の意図が伝えきれていないもの、子どもが読むには難しいもの、アプローチが平凡なものなど、各々課題もありました。また、惜しくも賞には入らなかったものの、ユニークな着想が光る作品、独特の作品世界を持つ完成度の高い作品もありました。
 今回、初の試みであった「いのちのことば社絵本大賞」は、多くの出会いに恵まれる貴重な機会となりました。来年もまた、作品公募の機会を設けたいと思っています。詳細は秋頃に告知予定です。ぜひ、またチャレンジしていただきたいと願っています。

『だれのて このて』 文・絵 ホンダマモル


 絵の持つ視覚的なインパクトを生かして、「手」というモチーフから十字架の愛を伝えようとするアイデアに唸りました。「だれのて このて?」というなぞかけと、次々に出てくる様々な人(動物)の手という展開は、繰り返しを用いる幼児絵本の定石をしっかりと守っています。最後に出てくるのが、十字架の釘痕があるイエスさまの手、というところが非常に印象的で、さらにイエスさまと手をつなぐ「わたしのて」を描いた結末が秀逸です。繰り返しのパターンが少ない点に物足りなさも感じますが、32頁の制限の中での間合い・テンポを考えると、良く考えて作り込まれていると思います。

『ソロソロさんのレモンの木』 文・髙田未羽 絵・山口新

 淡い水彩画がとても幻想的で、絵本の世界に引き込まれるようです。構図や色遣いも工夫されていて、レモンの酸っぱさが伝わってくるような表現力がすばらしいと思います。レモンとバナナという対照的なくだものの「味」を題材にし、他人の真似をするのではなく、自分の持ち味を生かせばいいのだというメッセージにつなげる展開はいいと思います。ただ、物語の肝であるレモンの木がバナナを実らせてしまう理由にたどりつくまでが長く、それを解決するための後半の展開が駆け足になり、説明的になっているのが残念です。また、聖書の教えがしっかりと伝わるようなら、さらに良い作品になったと思います。

『はかせとコッペのたび』 文・しのはらかもめ 絵・しんじはるか

 一色の線画ですが、緻密かつのびのびと描かれています。砂漠を旅する博士たちを、その風景とともに描いたパノラマは圧巻です。パンをもじった登場人物たちはユニークですが、物語との関連性が乏しいのが課題と感じます。文体はリズミカルで楽しげで、癖になりそうな言葉遊びの魅力があります。ありきたりの降誕物語に飽きている子どもたちには歓迎される意欲作と評価する声がある一方で、聖書物語をどこまで自由に脚色していいのか、また主人公たちの旅の目的が描かれておらず主題が見えにくいという見方もありました。ハプニングにめげず、祈り、奮闘する登場人物たちが目指す先に何があるのかが、どこかに描かれているとさらによかったかもしれません。