第3回 いのちのことば社絵本大賞 受賞作品紹介&講評

● 受賞作品・講評
絵本大賞 該当作品なし

優秀賞 2作品
『きょうも』おかざき もとこ
『これ なぁに?』いのうえ みか
● 総評
今回3回目となる絵本大賞、応募総数は24作品と昨年よりは少なめでしたが、再チャレンジの応募者もおられ、全体のレベルが回を重ねるごとに上がってきていることを実感します。また、今回は特に応募者の熱気のようなものがあり、絵本作りへの情熱、喜びを感じながらの選考でした。
表現方法、テーマともにバラエティに富んだ意欲作・力作がそろいました。温かみのある粘土細工による降誕物語、クラフトの画像にデジタル加工を施した遊び心のある作品、おこづかいをテーマに「ささげる」ことを考える絵本、十字架の出来事を下敷きに主人公の回心を描いた漫画テイストの作品、「かみさまはどこにいるの?」という子どもの素朴な疑問をユニークな物語に仕上げたものなど、それぞれに創意工夫や個性が光っていました。昨年同様に、絵とテキスト(物語)の出来栄えがそろわずに、惜しい作品もありました。絵だけ、テキストだけという観点で見ると、高いレベルのものもありました。
全体に粒ぞろいではありましたが、残念ながら大賞に届く作品はなく、前回に続いて今年も大賞の該当作品はなしという結果になりました。優秀賞には2つの作品を選ばせていただきました。作品をご応募くださったお一人お一人に心より感謝を申し上げます。

『きょうも』おかざき もとこ (テーマ:自由 対象年齢:年長)

何気ない日常への感謝が素直につづられる、素朴で温かい味わいの作品です。「きょうもあさひが のぼりました。しんこきゅうをして さあ、いちにちをはじめよう」。すこやかな朝から始まり、季節の移り変わりと日常を余韻たっぷりに描きながら、朝日が再びのぼる希望の朝で終わる構成展開はよくできています。小さな「わたし」が、日々の恵みのなかで成長し、やがて巣立っていく未来までを感じさせる世界観で、大人になっても繰り返し読みたくなる絵本になりそうです。ワクチンを打っている場面が描かれている点に見方が割れましたが、コロナ禍に生まれたこの作品に込めた、子どもたちへのエールとも読めました。作者にとって趣味で始めた色鉛筆画とのことですが、のびのびとした筆致が気持ちがいいのは、楽しんで描いているからでしょうか。

『これ なぁに?』いのうえ みか(テーマ:自由 対象年齢:年少)

 野菜の造形美と鮮やかな色彩に満ちた絵本です。表紙をめくると、スタンプで遊んでいるようなカラフルな絵柄が目に飛び込んできます。「これ なぁに?」の言葉でさらにめくると、そのスタンプが何だったのかがわかります。身近な野菜の外見とその断面の意外性に子どもたちの驚く顔が見えそうです。にんじん、ピーマン、たまねぎ、れんこん、ゴーヤ……野菜の存在感あふれるイラストが確かな画力で描かれ、最後に最高のデザイナーである神様へと気持ちが向かう展開です。構成やテキストはシンプルながら、単調にならないように断面のスタンプ画を見せる順番を変えるなど、よく工夫されています。創造への驚きを、形や色を楽しみながら伝える、キリスト教の絵本にはありそうでなかった作品です。表紙は、もっと中身の楽しさが伝わるインパクトがあってもよいと感じました。
今後の開催にも乞うご期待ください。次回の[いのちのことば社絵本大賞]の開催は、詳細が決まり次第ご案内いたします。

企画・主催:いのちのことば社 出版部

第2回いのちのことば社絵本大賞の受賞作品紹介&講評はこちら