書評books 降りて来て、寄り添ってくれる一冊
『思春期の心に寄りそう 信仰と心理学からの10の手紙』
森マミ著
B6変型判・144頁
定価1,650円(税込)
いのちのことば社
御茶の水キリストの教会牧師・茨城キリスト教学園 チャプレン 野口良哉
だれにでも、捨てられない何度でも読み返したい手紙があるはずです。かつてメールがなかった米国留学時代、私は日本からの手紙を求めてほぼ毎日、学内メールボックスへと通ったものでした。「遠い国からの良い消息は、疲れたたましいへの冷たい水」(箴言25・25)となったからです。
考えてみれば、聖書も究極の父親(神)からの母なる手紙のようなものではないでしょうか。それは「傍らに呼ばれた者(ギリシア語「パラクレートス」)」とも表現される聖霊のように、私たち一人一人に優しく寄り添ってくれます。
まさに、本書も、そんな優しい手紙のようです。嬉しいことに、思春期のみならず、思春期を遠い昔に過ごした初老の私の心にも寄り添ってくれます。本書は優しい語り口で、難しいことが易しく書かれているのです。
また本書は、私たちが他者の心に寄り添うためには、神の受肉に顕著に示されている、謙虚に“降りていく生き方”が必要であることを指し示しています。私たちが誰かを「理解する(understand)」ためには、「下に立つ(under-stand)」ことが必要である、と。本書は読者のもとへと降りて来てくれると同時に、読者である貴方が誰かの低みへと降りていくことをも促すのです。
もちろん、専門的・理論的なことにも触れられています。特に巻末の引用・参考文献は、読者をさらなる学びへと誘ってくれることでしょう。そして、特筆すべきは、各章末に添えられている「信仰と心理学からの10の手紙」と聖句です。それぞれの手紙と聖句は、時にその章をまとめ、時に読者への問いかけやチャレンジにもなっています。
なお、本書の中には著者の実体験が随所に記されていますが、それが著者の「キリスト教心理学」の真骨頂とも言えましょう。キリスト教(信仰)と心理学が対立したり、遊離することなく、キリスト教信仰に根差した心理学が展開されているのです。伝道にも用いられることでしょう。
大切な手紙のように、何度でも読み返してほしいものです。本書はあなたの心に寄り添い、あなたがだれかの心に寄り添うことをも優しく後押ししてくれるはずです。