特集 私たちは何を信じているのだろう

東京基督教大学 教授(組織神学)  齋藤 五十三(いそみ)

漫画書籍『教えて! 組織神学 神を知る6つの鍵』が出版されました。私は東京基督教大学で「組織神学」を教えていますので、ぜひ多くの方に本書を手に取っていただきたいと願っています。それは、一般的なイメージとして「組織神学は難しい……」という声を耳にすることが多いからです。確かに、専門的に深く学ぼうとすれば難しいのかもしれません。しかし本来、「組織神学」はキリスト者の信仰生活にとても身近な学びなのです。
「組織神学」とは何でしょう。私は、「キリスト教が何を信じているかを、聖書全体に基づいて体系的にまとめた教え」と定義しています。このように考えると、「組織神学」を学ぶ四つの意義が見えてきます。

何を信じているのかを知る

「組織神学」を教えていると、しばしば感じることがあります。それは、信仰生活が長い人であっても、自分が何を信じているのかを言葉にするのは意外と難しい、ということです。それでも、自分で言葉にしてみると、キリスト教の信仰がぐっと身近なものとして見えてきます。ここに「組織神学」の役割があります。
一例を挙げましょう。キリスト教には、「摂理」という教えがあります。神がご計画にしたがって、この世界や歴史、また私たちの日常を守り導いておられる働き。これを「摂理」と言います。私は「摂理」について教えるとき、学生の皆さんに次の質問を出し、グループで話し合う時間を設けています。「神がこの世界を計画どおりに導いているなら、私たちが祈ることには意味があるのでしょうか」。学生の皆さんは、祈ることの大切さを感覚的には知っています。それでも、いざ説明しようとすると、意外と言葉に詰まってしまうのです。でも聖書を片手に、「ああでもない、こうでもない」と語り合う時間は、いつもとても豊かなものになります。「祈ることの意味」や「摂理」を自分の言葉にしていく中で、キリスト教信仰が日常生活と深く結びついていることを実感していくのです。

本物を見分ける

信じる内容を言葉にして「知る」ことは、本物と偽物を見分ける目を養います。多くの方がご存じのように、キリスト教の歴史には絶えず「異端」と呼ばれる誤った教えが現れました。最も初期の異端は一世紀にすでに現れ、今日に至るまでさまざまな形で影響を及ぼしています。
教室の対話の中で学生の皆さんがよくこう言います。「異端の教えって、人間的には分かりやすいですね」。聖書は神の言葉ですから、そこには人間の理解を超えた真理も語られています。三位一体の教えなどはその代表です。
四世紀に「アレイオス論争」という論争が起こりました。アレイオスという人物が、キリストを御父によって造られた存在であり、御父よりも劣った神であると教えたのです。この教えが広まり大きな論争となりましたが、その理由の一つは、この教えが、(聖書に照らすと誤りであるにもかかわらず)人々にとって分かりやすかったからです。そのため多くの人々が惑わされました。「組織神学」の学びは、聖書全体の教えに基づいています。ですからこれを学ぶと、本物と偽物を見分ける洞察力が養われるのです。

教会の一致

「組織神学」の学びは、教会の一致にも深くかかわっています。
そのことを教える御言葉がエペソ人への手紙四章にあります。「御霊による一致を熱心に保ちなさい」(三節)と勧めたあと、パウロは次のように語ります。「主はひとり、信仰は一つ、バプテスマは一つです」(五節)。文脈から分かるように、まことの主についての理解が明確になり、信仰の内容が共有されるとき、教会の一致はより強められていくのです。ここには「バプテスマは一つ」ともあります。
洗礼を受けられた皆さんは、洗礼前に準備クラスで学びを受けたのではないでしょうか。実は、あの学びこそ、「組織神学」なのです。信仰の内容を学ぶことは、神の家族として共に生きるための備えでもあるのです。

聖書を読む助け

これまで述べてきたように、「組織神学」を学ぶ意義は実に大きく豊かなものです。まだまだ書き足りないのですが、最後にもう一点だけ触れて終わります。それは聖書を読む助けとなるということです。
宗教改革によって生まれたプロテスタント教会は、「聖書は聖書によって解釈される」という原則を大事にしてきました。難しい聖書箇所に出合ったときは、より明瞭に書かれている他の箇所に照らしながら理解するのです。聖書は、さまざまな著者が思い思いに書いた寄せ集めの書物ではありません。その背後には、まことの著者である三位一体の神がおられます。ですから、聖書全体に照らして読むとき、神のご人格に触れて、難しい箇所の意味も見えてくるのです。
「組織神学」は、この「聖書全体の教え」を整理して示す学びです。どうか「組織神学」の学びを通して、神を知り、自分を知り、聖書の豊かさを味わっていただきたいと願います。

<おすすめの関連書籍>
『日常の神学 いまさら聞けないあのこと、このこと』
実は知らなかった教会のこと、信仰生活のことで「今さら聞けない」ようなことを取り上げる。若い世代や洗礼を受けたばかりの人から、信仰歴○十年という人まで読める内容がつまった一冊。
岡村直樹著
B6変型判 定価1,650円(税込)

『10代から始めるキリスト教教理』
聖書・救い・教会などの基本的な教理を若者に届くことばと例話で解説。「何のために生きるのか」「恋愛をどうとらえる?」「自分は本当に救われているの?」などの疑問にも聖書の視点から答える。
大嶋重徳 著
四六判 定価1,760円(税込)