書評books  松江バンドの豊かさ

『松江バンドの歴史と信仰 バックストンの日本宣教の意義』

『松江バンドの歴史と信仰 バックストンの日本宣教の意義』
工藤弘雄著
A5判・640頁 定価7,480円(税込) いのちのことば社

日本イエス・キリスト教団 引退牧師 鎌野善三

一九七六年夏、関西聖書神学校四年生だった私に、「これを校正しておくように」と工藤弘雄学監から手渡されたのが、二〇頁ほどの「バックストンの流れを汲む聖化について」のゲラ刷りでした。それが、その年十月に『福音主義神学』第七号に掲載された論文であり、半世紀後の昨秋上梓された『松江バンドの歴史と信仰』にまで拡大発展したのです。まさに著者のライフ・ワークです。
六〇〇頁を超える本著は、松江バンドを通して現された神の「栄光の豊かさ」を味わわせてくれました。
まず、その広さです。一八九〇年に来日した英国人宣教師の、松江という地方都市での宣教が、横浜・熊本・札幌各バンドと同じほどの影響を日本キリスト教史に与えていることに驚きます。当時の日本基督一致教会や日本組合基督教会、また無教会の働きとの繋がりにも目が開かれました。また、中田重治・河邊貞吉のみならず、山室軍平・石井十次・三谷種吉とも交わりをもち、社会活動や教会音楽にも力を注いでいます。
次に、その長さです。バックストンの働きが明治維新の前に始まっていたプロテスタント宣教に「油を注いで燃え上がらせた」ことに感動します。また、大正・昭和のリバイバルとホーリネス運動が、松江バンドの働き人たちによって担われてきたこと、また戦後には、日本福音同盟の成立をはじめ、福音派諸教会の宣教協力にも、その後継者が深く関わっていることがわかります。
その高さは、バックストンの説教によって表されています。渡辺善太は、「バックストンは上から話す」と言っていたとのこと。まさに天が開けて神ご自身を見、その声を聞くことによって人は変えられ、福音宣教に心燃やされるのです。
最後に、その深さは、弱さを自覚した者に注がれる聖霊の恵みと言えるでしょう。バックストンの言う聖化は、自力では何もできないゆえに神との交わりを祈り求める者になることです。松江バンドは最初から最後まで、「万事聖霊・万事祈祷」によることを、改めて教えられました。