書評books 日常生活の細部に行きわたる神の働きに目を開かれていく本
『「日常」という典礼 日々の生活の中で培われる霊性』
ティシュ・H・ウォレン著中村 佐知訳
四六判
定価2,200円(税込)
いのちのことば社
クリスチャン・ライフ成長研究会総主事
カンバーランド長老教会あさひ教会協力牧師
松本雅弘
聖公会の女性教職、ティシュ・ハリソン・ウォレンによる本書『日常という典礼――日々の生活の中で培われる霊性』は、「当たり前」として見過ごしがちな日常生活を、礼拝形式と響き合わせながら、神が生き生きと働き、私たちと関わりをもたれる場として捉え直す一冊です。霊的同伴の専門家で翻訳経験も豊かな中村佐知氏の訳文は、著者の語り口の温かさを損なわず、読者が自らの生活に引き寄せて味わえるよう丁寧に整えられています。
著者は、典礼(礼拝と聖礼典)の流れを手がかりに、朝の目覚めから始め、歯磨き、食卓の準備とその時間、メールのチェック、人間関係でのいら立ちや失敗、夜の休息に至るまで、平凡な日常の細部に神の働きを見いだしていきます。礼拝の要素や順序が日常生活のリズムと重なり合うことに気づかされ、「生活には礼拝と祈りから切り離された領域がある」という思い込みが砕かれ、信仰が特別な宗教行為ではなく、日常生活の隅々にまで及ぶ神の支配のもとにあることが示されるのです。
著者の、弱さや失敗を含め自らを率直に語る姿勢が、不思議と読者に安心感と親近感を与えます。目覚めた直後の著者自身の描写箇所を読んだ時には、思わず吹き出してしまいました。霊性とは完璧さを目指す道ではなく、神の愛に支えられながら「ありのままの自分」で歩む旅路であることが、具体的なエピソードを通して伝わってきました。
ともすると忙しさや不安に押し流され、神の働きを見失いがちな私たちにとって、礼拝や集会、ディボーションに限らず、実は日常生活そのもの(身体、喜び、恐れ、疲労、友情、衝突等の経験)が自分を形づくり、本来あるべき姿へと変容させていくという洞察は、信仰生活を考えるうえでとても刺激的でした。
巻末の「振り返りのための質問と実践」も個人やグループでの学びに有益です。信仰に行き詰まりや疲れを覚えている方にとって、新鮮な視点と聖霊の息吹を感じさせる一押しの信仰書です。