特集 『エッセンシャル聖書ガイド』 を使って聖書を学ぶ
聖書66巻をコンパクトに解説する『エッセンシャル聖書ガイド』。学びの手引書として、入門者はもちろん、学び直しにも活用できる使い勝手のよい本書の内容を紹介する。
『エッセンシャル聖書ガイド』
J・H・ウォルトン、M・L・ストラウス、T・クーパーjr. 著
A5判 152頁 定価1,870円(税込)
いのちのことば社
聖書の歴史的な意味を理解する大切さ
神戸ルーテル神学校講師 小宮山 愛爾
知らない場所に旅行に行くとき、今ではスマホさえあれば、道に迷うことも店選びも困ることはなくなりましたが、一昔前はガイドブックを準備したものです。
私も大学卒業後にハワイでホームステイをする際に、二冊持って行ったことを覚えています。到着直後はガイドブックをよく開きましたが、現地である程度時間を過ごし、バス停や店の場所など、道を覚えてしまうとその頻度は少なくなります。
では、ガイドブックはもう役割がないのかと言うと、そうではありません。現地に詳しくなった後で読み返してみると、大切な情報がしっかりと載っていたことや見落としていた情報に、改めて気づかされたものです。
そのようなガイドブックとして使えるのが『エッセンシャル聖書ガイド』です。初めて聖書を読む人には、どのように聖書の世界を歩けばいいのか、物語を読み進めていけばいいのかを教えてくれる一冊。聖書を読み慣れた人には、見落としていた点に気づかせてくれたり、大切なことにもう一度目を留めるきっかけを与えてくれます。
聖書を読むことは決して簡単なことではありません。しかし、その難しさというのは、単に内容の理解の難しさだけではありません。著者が序文で触れているように、「聖書に書かれていることと自分の現在の生活とのつながり」を理解すること、これが難しいのです。
私たちが聖書を読むとき、二つの読み方の間を行き来しています。一つは「聖書そのものが書かれた当時のメッセージ」を読むということで、これは「歴史的な意味」を求める読み方と言えます。もう一つは「今日、聖書を読む私へのメッセージ」を読むということで、これは「デボーショナルな意味」を求める読み方と言えるでしょう。
私が教会でも神学校でも強調しているのは、歴史的な意味の土台を抜きにしたデボーショナルな読み方に注意するということです。歴史的な意味を軽視、無視すると、聖書そのものが語っていることとデボーショナルな受け取りとの関係が薄くなっていきます。自分自身の心にあることが、受け取りの中に色濃く反映している可能性が常にあるからです。この点で本書の、特に旧約聖書の解説は、聖書の歴史的な意味を理解するのに役に立つでしょう。
さて、この二つの読み方のバランスを求められる時、中心にいるのがイエス・キリストです。著者の言葉を借りるなら、旧新約聖書全体は「『私たち自身の歴史』であり、私たちの霊的な先祖である信仰の男女に対して神がイエス・キリストという人物の中にご自身を現して、イエスに従うこの者たちが人類史上最大の運動に乗り出すという物語」であるからです。
キリスト教の歴史の初めから、キリストを通して、キリストを中心にして使徒たちは旧約聖書を読んできました。それはイエスご自身の言葉に基づくものです(ルカの福音書24章27節、ヨハネの福音書5章39節)。本書の旧約編と新約編の間に、旧約聖書がどのように新約聖書と関係しているのかを説明している部分があります。そこで著者は、「新約聖書の中の『物語の続き』を読まずに、旧約聖書の神の目的を完全に理解することは不可能である。同じように、旧約聖書の中で築かれた土台なしに新約聖書の物語を理解することは不可能である。新約聖書の中心的なテーマのすべては、旧約聖書にその背景と文脈がある」と述べています。このことは旧新約聖書全体を読む時に忘れてはならない、まさに聖書を読む際にいつも立ち返るべき基本です。イエス・キリストを中心に読む時、聖書のエッセンスに触れていくことになり、聖書の歴史的な意味と今日の私への意味のつながりがイエス・キリストを通して見えてくるでしょう。本書を読む際には、この部分を最初に読むことをお勧めします。
また、コンパクトさも本書の良いところです。聖書は、旧新約を合わせると二千ページ近くになりますが、その手引きが分厚い本だと、それこそ聖書を読む難しさが増してしまいます。手軽に手に取れるサイズというのもお勧めできる点です。聖書の隣に置いておくガイドブックとして、本書が用いられことを願っています。