書評books 一日一回、立ち止まって、手に取る本

群馬キリストチャペル 牧会者 小島俊一

 


「ルカの福音書365の黙想と祈り」
篠原明 著
B6判・168頁
定価1,870(税込)
いのちのことば社

 

地元群馬から東京へ向かうとき、新幹線だと一時間弱、在来線だと二時間ほど。時間と費用を天秤にかけながら、それでも時間優先に動かざるをえないことがままあります。これは電車に限ったことではなく、生活様式から思考様式まで、待つことを経ずに、結果を得ることを良しとする「新幹線型」の時代に私たちは生きています。
そんな時代だからこそ、イエス様が「マリアはその良いほうを選びました」(ルカ10・42)と言われたように、主の足もとに座り、主のことばに聞き入ることを私たちも選択していきたいものです。
本書の出版にあたり、かねてより教会同士の交わりをいただいていた著者から妻に挿絵の依頼がありました。そのようなこともあり、私も親しみを感じながらこの本の黙想と祈りに取り組みました。霊的糧の〝早食い〟でも〝大食い〟でもなく、ゆっくり味わうような読み方です。マルタのように「いろいろなことを思い煩って、心を乱して」(ルカ10・41)しまう私にとって、この本はまさに時宜を得た恵みでした。しかも新幹線型生活の人々にとってありがたい短さ。無理なく取り組めます。著者は主の働きのために落ち着きを失ってしまったマルタに対して、主イエスがその心を解きほぐしてくださった様子を記しています。主のやさしい眼差しを見せていただきました。
本書はルカの福音書と使徒の働きの解説から始まり、聖書を読むとはどういうことか、ディボーションの具体的な持ち方も提案されており、初心者にも助けになります。祈り、みことばを読み、問いに答え、主に応答する。その数分の黙想が、心をリセットし、霊的な養いの時間となるのです。
「忙しい」「時間がない」と言いながら、実は無駄に過ごしている時間も少なくありません。そのすべてをなくすことはできなくても、ほんの数分を取り分けてみませんか。一日一回、立ち止まって、本書を手に取ってみましょう。それが習慣になればしめたものです。数分の立ち止まりが、やがて豊かな霊的な養いへとつながっていくのです。