書評books 「真の自己」を生きるために
ニューライフキリスト教会 牧師 豊田信行
『新・情緒的に健康な教会をめざして 魂の変容をもたらす弟子づくり』
ピーター・スキャゼロ 著
鈴木茂、鈴木敦子 訳
B6判・480頁
定価円3,520(税込)
いのちのことば社
著者のピーター・スキャゼロ氏は『情緒的に健康な教会をめざして』(いのちのことば社、二〇〇九年)のなかで、「霊的、霊性」という概念に情緒面が欠落していることを指摘しました。今回、刊行された『新・情緒的に健康な教会をめざして』は、教会よりもキリスト者の情緒的な成熟に焦点を合わせた内容になっています。
キリスト者の霊性の深まりは情緒的な未熟さによって妨げられます。情緒的な未熟さが見過ごされ、働きの成果だけが切り取られると、虚像が作り出されます。本書では虚像を「偽りの自己」と表現しています。著者自身が「偽りの自己」を生きてきたことを妻の一言、「もう教会をやめるわ」によって気づかされました。教会の急激な成長が情緒面の未熟さを覆い隠していたのです。結果、「不健全な霊性」という実像から乖離した「偽りの自己」を生きていたのです。
「不健全な霊性」の健全化の取り組みの一環として、「神のために働くことより、神との交わりを優先する」(第三章)ことを推奨しています。著者は、神との交わりを優先するためには、自分自身に注意を払うことの大切さを強調しています。「『情緒的に満たされている』とは、自分の感情、弱さ、限界、そして過去が現在の自分にどのような影響を与えているか、また周囲の人は自分のことをどのような人として体験しているかに、非常によく気づいているということです」(本書一〇九、一一〇頁)。
セルフ・アウェアネス(自己認識)は、キリスト者の間で蔑ろにされている視点です。イエスは弟子たちに、「人々は人の子をだれだと言っていますか」(マタイ一六・一三)と尋ねられたことがあります。イエスは人々の目や評価を気にされたわけではありません。しかし、イエスはよく仕えるために、人々がご自身をどのように体験しているかに心を配られました。
本書はキリスト者が「偽りの自己」を脱ぎ去り、本当の自分と向き合い、キリストにある「真の自己」を生きることを助けてくれるはずです。