特集 『カラー新聖書ガイドブック』 その魅力と活用法! 一生使えるガイドブック、待望のリニューアル版
ビジュアル面を中心に刷新された『カラー新聖書ガイドブック』。学問的かつ網羅的な解説、親しみやすいコラム、貴重な資料画像など、聖書通読の友として活用できる本書の魅力を紹介する。
関西聖書神学校校長、AGST/J関西研修センター長、日本イエス・キリスト教団神戸中央教会副牧師 鎌野直人
ライバルが帰ってきました。それもより強くなって。
拙書『旧約聖書ガイドブック』(いのちのことば社、二〇二四年)を出版した理由のひとつは、『カラー新聖書ガイドブック』(いのちのことば社、二〇一〇年)が絶版になったからです。キリスト者が一生使える、聖書の概略の書籍として神学校の学生に薦めていた書物が手に入らなくなりましたので、その代替にと、筆者がこれまで書き上げてきた原稿に手を入れて、出版しました。ところが、二〇二五年、『カラー新聖書ガイドブック』が改訂新版となって帰ってきます。「聖書 新改訳2017」を用い、より美しく、的確な写真と図表を携えて。さらに、学的にレベルの高い数多くの小論についても、新しいものが加えられています。
なぜ、聖書に「ガイドブック」が必要なのでしょうか。「聖書は神のことばなのだから、それをひたすらに読むだけでいいではないか」と考える方もおられるでしょう。確かにそうです。キリスト教会の歴史の中で、多くの人がガイドブックなしで聖書を読み、神に出会い、恵みをいただき、新しい人生を歩み、世界を変えてきました。だから、私たちもガイドブックなしで大丈夫だ、と言うこともできるでしょう。
けれども、ガイドブックがあることでキリスト者の生涯が豊かにもなります。
徳島県鳴門市にある大塚国際美術館。日本第二位の延べ床面積を持っています。展示されているのは「陶板複製画」なので「本物」ではありません。それでも、西洋名画が千余点、原寸大で一堂に展示されています。
この美術館をガイドブックなしに見学することはできますし、それでも十分に楽しめます。しかし、個々の作品の繊細な特徴(たとえば、指の位置や視点、全体の構図)や歴史的背景、さらには複数の作品の美術史の中での特別なつながり(たとえば、受胎告知の共通点)などは、誰かに説明してもらわないと気がつかないものです。ガイドブックがあれば気がついたのに、と後から思うことは数多くあります。
聖書は、天地創造の神からの語りかけであり、一つの壮大な物語であり、ある時代に生きた人々が綴った古代文書のコレクションであり、イスラエルや教会における対話の集大成であり、何千年にもわたって読み継がれてきた古典文学です。
ガイドブックなしに聖書という「文書館」に入っても十分に味わうことはできますが、多くの素晴らしい特徴に気づかずに終わってしまうことも多々あります。さらに、キリスト教会二千年の遺産に気がつかないかもしれません。ガイドブックがなかったために全く理解できず、聖書という「文書館」に入ろうとしなくなった人もいます。ですから、聖書という神からの賜物を存分に味わうためにも聖書のガイドブックはあったほうがいいのです。
「ガイドブック」にどのようにガイドしてもらうと、聖書の読者は助かるのでしょうか。
まず、それぞれの書の内容についてのガイドが必要です。短い書なら繰り返し読むことで、その内容を把握することもできるかもしれません。しかし、長い書、とくに預言書などは、ガイドなしでは迷路に迷い込んでしまいがちです。物語の登場人物や書の著者についてのガイドも読者を助けます。
次に、聖書の全体像を示してくれるガイドも必要です。六十六の書物の並べられている順の意義や、それぞれの書が聖書全体の中でどのような位置を占めるのかを知り、聖書の中に存在している対話に気がつくことも大切です。
三つ目に、聖書が生み出された古代世界の背景を教えてくれるガイドが必要です。聖書は、二一世紀の日本に生きる私たちからは、遠く離れたある特定の地域に住む人が、ある特定の自然環境の中で、ある特定の時代に経験したことが、ある特定のことばで、ある特定の文化の人に理解ができるように書かれたものです。ですから、古代の人々の生活や世界観を知らないと、理解できない部分が多くあります。一方で、聖書に関わり深い歴史や考古学、地理、動植物、暦がわかると聖書の内容がより立体的に見えてくるのです。
四つ目に、聖書を読む適切な心得を知っておくことも大切です。神のことばである聖書が語ろうとすることを、注意深く聞く姿勢を養う必要があります。また、教会の歴史の中で聖書がどのように読まれ、それぞれの時代の社会に影響を与え、逆に社会から影響を受けたかを知ることも、聖書を読む助けとなります。私たちも社会とは無関係に生きることができないからです。現代に生きる私たちが当たり前だと思っている前提に対して、少し批判的になるためのガイドも大切です。
五つ目に、古代に書かれた文書が、どのようなプロセスで一つのコレクションとして集められ、現代に至るまで保持されたかを知ることも大切です。さらに、それが、どのようにして様々なことばに翻訳され、今も翻訳され続けているかを知ることも必要でしょう。古代文書である聖書が、母国語で普通に読めるというのは特別なことなのです。
最後に、視覚的ガイドが必要です。私たちは聖書を目で読み、その朗読を耳で聴きます。そして、想像力を働かせて、理解しようとします。日本に住む私たちは「山」と聞くと、木々が覆う緑色の山を思い浮かべますが、古代イスラエルの山は日本の山とは大きく異なります。写真で見ればその違いは明らかです。写真は聖書を適切に読むことを助けてくれるのです。
『カラー新聖書ガイドブック』は、これらのガイドが一同にそろった本です。大半のページが各書の内容の概略や様々な写真で占められています。加えて、第一部の「聖書入門」では聖書の全体像、背景、読み方、現代社会との関わりに加えて、聖書そのものがどのように私たちの手に伝えられてきたか、がまとめられています。そして、全巻に散りばめられている小論が、各書の学びを深める手助けになっています。旧版との重なりも多くありますが、本書は「買い」です。皆さんの聖書のお伴にぜひどうぞ。
改訂新版 好評発売中
『カラー新聖書ガイドブック』
189×234ミリ・800頁 定価7,700円(税込)
いのちのことば社