特集 『教えて! 組織神学』を執筆して

『教えて! 組織神学 神を知る6つの鍵』漫画執筆者  向日 蒔人

「組織神学」とは何か。
それは、『教えて! 組織神学』の漫画パートを担当させていただいた私にとって、大きな問いでした。本書は原作の書籍『自分を知り、神を知る 聖書理解を助ける6つの鍵』(リチャード・ブラッシュ著、いのちのことば社、二〇二二年)を漫画化して再構成したものです。
「組織神学」という言葉は聞いたことがありました。しかしそれが何なのか、自分にどう関係するのかは分かりませんでした。
クリスチャンとして生活する中で、聞いたことはあるし、大切なのだろうと思うけれど、うまく説明できないことはたくさんあります。私にとって「組織神学」という言葉もそのうちの一つでした。そんな私が「組織神学」について記された書籍を漫画にするというのは、今振り返ってもよく引き受けたものだと思います。ですが「よく分かっていない」ということも、もしかしたら読者の目線に立つ大事な要素かもしれないと感じ、私も学ばせてもらう気持ちで、思い切って引き受けさせていただいた次第です。そしてそれは、そのまま漫画パートの物語が動き出すきっかけにもなりました。
物語は、主人公の丘野基が友人から「自分は神を信じていないから、神と何の関係もない」と言われる場面から始まります。咄嗟のこととはいえ、「自分が信じているものを説明することの難しさ」を痛感した基でしたが、ひょんなことから神学校の教師であるリチャード先生と出会います。そこで、神について語ろうとしている基は、すでに「神学」していることに気づかされます。
このことは、私にとっても大事な視点でした。それは、どんなものであっても「神」について考え、「神」について語ろうとするとき、それは神学の枠組みの中に入っているということです。つまり「よく分かっていなくても」、神について話題にしようとするなら、それはすでに「神学」しているのです。この地点を描き出すことで、読者の方にもグンと「神学」に近づいていただけるのではないかと思いました。
原作の書籍でも、本書の漫画のセリフでも、リチャード先生が「事実、私たちは神学を『行って』いるのであり、神学を『持って』いるのです」と言っています。
私たちは神について考え、語ろうとするとき、すでに「神学」している。すると問題は「自分に神学は必要か?」ではなく、自分は「良い神学を求めているか」ということになります。良い神学とは、言うまでもなく「聖書的」であるということです。その前提を強調しながら、基とリチャード先生は次のステップに進みます。ここで「組織神学」の登場です。組織神学とは、聖書に「論理のレンズ」を用いてアプローチし、「聖書の教えを主題に分けて学び」、体系化しようとするものです。「論理」と聞くと敬遠される方もおられるかもしれません。しかし、私たちはそれぞれの理屈をもって物事を理解しようとします。つまり、意識の差はあれど「論理的」なのです。だからこそ、私たちは組織神学と無関係ではいられません。「私たちは皆、神について論理的に考え、自分にとって意味のある方法で神と関係を持とうとしているからです」(原作・二一頁)
そしてそのことはまさに、漫画の中でリチャード先生と基が実践しています。漫画の各章では、「論理のレンズ」を用いながら、様々な問いに対する聖書的な答えを模索し、「神」について、そして「自分」について理解を深めようとする二人の姿を見ることができます。とくに基は、学ぶ中で聖書がより近くなったように感じたり、聖書を通して神が示されていることを知るうちに、自分がどう在るべきかという内省へと導かれていきます。
今回、意識的に描こうとしたのはこの点でした。それは、基というキャラクターを通して、組織神学の学びをするということ、組織神学の学びをしたときにどのような変化があるのかということを、少しでも体験していただきたいということです。もちろん、組織神学がすべての問いに答え得るというわけではありません。しかし組織神学は「普段の信仰生活のなかで感じている疑問に対する何らかのヒント」を見つけるのに有効です。
今回描いたことは、決して「漫画」という媒体の中だけのものではありません。基とリチャード先生がしていた学びは、私たちの日常にもつながる出来事です。私たちは何らかのかたちで「神学」し、組織神学に関わっているのです。ぜひ、その学びのきっかけに本書が用いられ、原作も手に取っていただき、聖書の豊かさ、奥深さを味わってもらえたら幸いです。