特集 名著『神との友情』復刊への期待

日本同盟基督教団法人事務主事・牧師、一般社団法人クレーシス代表理事  笠川路人(みちと)

 ジェームズ・フーストン師の名著『神との友情』(いのちのことば社、一九九九年初版発行)が限定復刊として再版候補に入ったことを聞き、大変うれしく思います。本書は中古本としても出回ることが非常に稀な本ですので、今回の再版が実現することで多くの方に読んでいただく機会が増えることでしょう。
 フーストン師から直接学びを受けた先輩方が数多くおられる中で、その末席にいるような私が本書の特集を担当することは、大変恐縮な思いです。しかし、『神との友情』と、その著者であるフーストン師から励ましを得た一人として、恵みの分かち合いを記させていただきます。

『神との友情』との出合い

 著者のジェームズ・フーストン師はリージェント・カレッジ(カナダ・バンクーバー市)の創設者であり、福音派における霊性の神学のパイオニア的存在でもあります。リージェント・カレッジの卒業生を中心に、世界中にフーストン師から学びや薫陶を受けた方々がおられます。
 私自身は、将来の献身を祈りながら社会人として働いていた二〇〇七年に、『神との友情』に出合いました。フーストン師のあたたかで穏やかな人柄を感じ取れる文章と、祈りをテーマに心の深みまで取り扱う内容に一瞬で引き込まれたのを覚えています。
 「神は私たちを召し、私たちのアキレス腱、すなわちたよりない、つまずきながらしか歩めない私の最も弱い部分を用いて、私たちが生来の弱さや自分の人格の深い傷をくぐり抜け、霊的に強く成長するように、導かれるお方であるということです」(9頁)
 この一文を読んだ時に、今まで心に抱えていた重荷がふっと軽くなった気持ちになりました。弱さを抱えるありのままの自分を受け入れてもらったという安心感と、何度も挫折を続けてきた祈りという分野を通して、霊的に成長する希望をいただいた瞬間でした。
 本書は、フーストン師の数多くの牧会カウンセリングの経験から来る深い洞察によって、キリスト者の祈りを妨げる要因や克服すべき課題について詳しく解説しています。
 家族から受け継いだ様々な性質・気質が、どのように神との関係や祈りの生活に影響を及ぼしているのか。どうしたら私たちの自己中心が打ち砕かれ、真に祈ることができるようになるのか、具体的なケースを通して学ぶことができます。
 本書には、神のことばである聖書の実践的な祈りへの適用が示されていると同時に、フーストン師自身が励まされてきたであろう、教父時代から中世、そして近代・現代に至るまでの多くの聖徒たちの著作や祈りの言葉が引用されています。これらの祈りを通して、私たちもキリスト教の豊かな祈りの伝統を味わい、その祈りに倣う恵みを受けることができます。
 例えば、フランソア・フェネロン大司教の「祈ることをお教えください。私の内で、どうかご自身が祈ってください」(24頁)という祈りの実践は、私の心の内に住んで祈りを導かれる聖霊の臨在を体験する恵みとなりました。
 キリスト者の祈りの目標は三位一体である神との親しい交わりに導かれることであり、「父、子、聖霊の愛の共同体に引き寄せられるとき、初めてどのように他者に近づくべきかを教えられるのです」(345頁)とあるように、祈りによって神との関係が深まると、他者との関係も育むことになります。

フーストン師との対話

 私自身も本書を五年、十年と繰り返し読み続け、学ばせていただいた祈りを少しずつ実践する中で、共に祈る友が与えられ、祈りの友との霊的友情によって信仰の歩みと働きが支えられてきました。
 私個人の証しとなりますが、『神との友情』を読み続けるうちに、フーストン師がおられるリージェント・カレッジで学びたいという強い思いが湧いてきました。二〇一一年秋にカナダ・バンクーバーに渡り、二〇一五年までの四年間、リージェント・カレッジで学ぶ機会をいただきました。
 入学して早々、フーストン師にお会いした時に、日本から来たことを話すと、心から歓迎してくださり、早速、ご自宅に私の家族(妻と娘)を招いてくださいました。神学校内での対話だけでなく、時にはプライベートでランチに連れて行ってくださり、先生との交流を通して多くの励ましと示唆をいただきました。先生からいただいた、「ミチト、イエス・キリストの福音は日本人の心と文化を貫いていると思いますか?」という質問は、私の人生の召命を考えるきっかけとなりました。

「本番は六十歳から」

 「クリスチャンの本番は六十歳から始まるからね」という先生の言葉は、学びを進める中で自らの知識不足や信仰の浅さを痛感していた私にとって、大きな励ましとなりました。確かに『神との友情』の初版(英語版)は、先生が六十七歳の時の著作ですから、この本を書き終えるまでにどれほどの祈りと人々との対話、信仰者としての経験を積まれてきたことかと思います。
 日本に帰国してからも、先生にお会いできる機会には、牧会や信仰に関する質問をさせていただき、そのたびに知恵と示唆に満ちたフィードバックをいただき、支えられてきました。
 昨年六月にもフーストン師をお訪ねする機会がありましたが、百二歳になられた先生は笑顔で迎えてくださり、私の将来の働きのために祈ってくださいました。
「祈りの生活に前進するためには、真の信仰の友、または信仰の先輩との友情が不可欠です。その友の模範や助言、友情が、私たちの霊的な旅路の道しるべとなります」(315頁)
 信仰の先輩として模範を示してくださったフーストン師との出会いを、主に感謝いたします。そして『神との友情』を通して、祈りの生活の祝福を経験する方が、この日本において一人でも多く起こされることを心から願っています。


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