書評books 弱さは弱さで終わらない
『「信じても苦しい」が終わるとき 傷ついた人のための霊性の神学』
中村穣 著
四六判
定価1,760円(税込)
いのちのことば社
ニューライフキリスト教会牧師 豊田信行
穣先生の『信じても苦しい人へ』『うめきから始まる信仰』(いのちのことば社)の第三弾。ホップ、ステップ、ジャンプ。穣さんの本は「弱さ」に寄り添うだけでは終わらなかった。実に、弱さを誇るところまで導いてくれる。
神の恵みは、弱さを弱さで終わらせない。神は苦しみを再利用(変な表現ですが)される。絶対に無駄になさることはない。「離れること」(自分の視点を脇に置くこと)から気づきが生まれる。だから、日常の喧騒から少し離れて、じっくりと読まれることをお勧めする。
「苦悩は自分を削るということですから、削られた場所に『隙間』が生まれます。この隙間が神さまを迎え入れる空間となり、信仰が苦悩のある場所から始まるというわけです」(本文二九頁)
神はご自身の居場所(隙間)を設けるために苦悩や空虚感を用いられる。なるほど。苦悩する自分を信仰が足りないと責めなくてもいい。空虚感をまぎらわしてはいけない。喜べない時だってあるし、感謝できない時もある。でも、苦悩、空虚感が神と出会う場所となるのだ。だから、キリスト教は超越的な信仰なんだ。超越した神との出会いは超越した信仰、自己への執着、こだわりを捨てることが大切。
「超越的信仰の世界では、目標はただ一つ『自分の力をすべて出して、超越した神さまと出会い、一体となる』ことなのです」(五九頁)
人生から苦悩、挫折、空虚感を取り除いたら、神との一体感は遠ざかっていく。今日のキリスト教では「神との一体」はあまり語られなくなった。神秘的だと敬遠されがちかもしれない。いやいや、福音の神髄ではないか。
本書は、キリスト者の本来の存在(神さまから始まる自分)に立ち返ることで、ようやく、神との一体へと至る旅路が始まることを丁寧に解説してくれる。
穣先生が「十字架の聖ヨハネ」をガイド役にして「神さまから始まる自分」(霊魂)へと至る旅路の同伴者となってくれる。弱さを分かち合えるグループで一緒に旅に出かけてほしい。