書評books そっとそばに寄り添うことの大切さを伝えてくれる一冊
『悲しみとともに生きる グリーフワークとスピリチュアルケア』
清田直人・窪寺俊之著
四六判・定価1,870円(税込)
いのちのことば社
愛染橋病院 チャプレン 中井珠惠
本書は、悲しみとともにあるあなたにそっと寄り添い、語りかけてくれる一冊です。
著者のお二人は、長年悲しむ人々に寄り添ってきたチャプレンです。
清田氏は、相談者が「なぜ自分はこんなに苦しまねばならないのか」と問うとき、その問いに真摯に耳を傾け、共に悩み続けることが必要であると言います。清田氏のもとを訪れた相談者の一人であるコウジさんにとって、清田氏との対話は娘への思いを語る唯一の時間となります。「自死した娘を殺したのは私だ」と苦しむコウジさんでしたが、娘を思い出すことで生じる罪悪感を、娘とつながり続ける証しだと思うようになります。その間、清田氏は、コウジさんの罪悪感を解消しようとはしません。コウジさんの抱えきれない苦しみに圧倒されながらもそばを離れず、コウジさんが罪悪感に生きる意味を見いだすのを信じて見守ります。その静かに真摯に見守り続ける姿勢こそがコウジさんに安心感を与え、コウジさんは赦されて罪悪感に向き合うことができたのだと思うのです。
悲しみを抱えた人は、その痛みから身を守るために、心を閉ざしたり、向けどころのない怒りを表したりすることがあります。窪寺氏は、悲しみにたどり着くことができない自らの限界、閉ざした心に自らの言葉が届かない無力さ、そして誠実に生きてきたその人がなぜ苦しまなくてはならないのかという問いを抱えながら寄り添う姿を、私たちに示してくれます。
窪寺氏は、限界や無力さや問いを、そっと悲しむその人にも明かします。その言葉は、閉ざしていた心をゆっくりと溶かし、そう生きざるを得なかったその人の生い立ちを窪寺氏に証ししていきます。その語りは、その人がたくさんのつながりによって生かされてきたことをつまびらかにし、そのつながり一つ一つに神が働いておられることを感じさせてくれます。
本書は伝えてくれます。悲しみとともに生きる人のそばには、静かに、しかし確かに神がいてくださることを。