特集 静まってみことばと向き合う
世にあるかぎり試練は避けられないが、思いわずらいに心騒ぐときも、神の前に静まり、みことばに聞きながら歩みたい。年頭にあたり、日々のディボーションの恵みを考える。
暗闇の中にある希望を伝えたい
保守バプテスト同盟 福島第一聖書バプテスト教会アドバイザー牧師 佐藤 彰
好評既刊『366日ディボーション 苦しみの向こうに光あり』
佐藤彰 著
A6判・392頁
定価1,870 円(税込)
いのちのことば社
イエス様の祈りの生活
マルコの福音書一章三五〜三八節には、イエス様の隠れた祈りの生活が記されています。
マルコの福音書の特徴は、出来事と出来事の間に「そしてすぐ」という接続詞が入り、イエス様の公生涯が、登場から十字架・復活・昇天までストレートに描かれている点です。ですから降誕の記事もなく、四福音書中、最もコンパクトに十六章に収められています。
にもかかわらず省かれなかったのが、イエス様の祈りの生活についてです。これを省けば、イエス様の公生涯の説明がつかないからです。それほどにイエス様の祈りの生活は大事でした。
イエス様の祈りの時間ですが、「朝早く、まだ暗いうちに」と記されています。イエス様は定められた場所で、一日がスタートする前に祈りの時間を確保しておられました。そういえば「主の祈り」も、イエス様がよく祈るので、弟子たちが「私たちにも祈りを教えてください」と懇願したことがきっかけでした(ルカ11・1)。
口語訳聖書は「朝早く、まだ暗いうちに」を「夜の明けるよほど前に」と訳しました。朝の六時ではなく、五時か四時だったかもしれません。後で起きてイエス様を探した弟子たちは、先生の評判は今日もすごいことを伝えましたが、イエス様の答えは「別の町や村へ行こう。……そのために、わたしは出て来たのだから」でした。
慌ただしい一日が始まる前に、静まって祈りの時を持ち、父なる神の御心を求める。人々の賞賛の中に身をまかせることは心地よいはずですが、イエス様の使命はこの町にとどまり、町中の人の病を癒やすことではありませんでした。神の愛を示し、十字架にかかり、復活から昇天までの公生涯で救いの道を拓くことです。イエス様の祈りの生活は、そんな公生涯の道しるベだったのです。
ところで、その前日のスケジュールは多忙でした。安息日に会堂でメッセージを力強く語り、その直後に悪霊と対峙し、夕方になるとペテロの家に行って姑の熱病を癒やし、夕食後は評判を聞きつけた町中の人が押し寄せ、求めに応じて奔走するイエス様でした(マルコ1・21~33)。どんなにお疲れだったでしょう。就寝は午前様だったでしょうか。にもかかわらず翌朝には、早朝に祈りに行くのでした。
私の失敗
私は神学校入学時、祈りの生活を知りませんでした。ですから、勉強や教会奉仕も自力でがんばるほかありませんでした。
そんな生活はやがて行き詰まり、八方塞がりとなって私は初めて天を仰ぎ祈ったのです。すると布地に針で穴を開け、新しい世界が広がるような感覚になりました。祈って主とともに歩む生活があったのかと。
それ以降私は、外に出て五分歩きながら祈り、やがて祈りは十分になり、一時間となりました。そしてそれは、私の宝の時間になったのです。何かが少しずつ変わり始めました。
神学校を卒業した私は、右も左もわからないまま二十五歳で牧師となり、やがてストレスからか頭痛に悩まされるようになりました。そして頭痛の発作は、恐れていた礼拝直前に起こりました。
牧師室でひとり倒れ込んだ私は、祈るほかありませんでした。「主よ助けてください。講壇に立てるようにしてください」。すると頭痛は消え、以来今日まで頭痛は起こっていません。
祈りによって、誰もが一律にそうなるというわけではありません。聖書は、病は恵みだとも語っています。ただこの時の私は、今後困難に出合うごとに祈りをもって乗り越えるよう示されたのです。
人生を変える祈り
私の献身については、背後に母の祈りがありました。私がまだ二歳の時、教会保育園に迎えに来た母に向かって「僕は教会の○○牧師になる」と言ったのだそうです。当時苦しい生活をしていた母はそれを神様からの語りかけと受け止め、私を神にささげ、以来二十年間祈りを積んできたのです。
途中私は教会から離れましたが突如戻され、強く心の中に「私は牧師になる」との思いが与えられて消すことができなくなりました。そして今、私は牧師をしています。
祈りは、人生を変えます。
苦しみの向こうに光あり
昨春、ディボーションガイド『苦しみの向こうに光あり』(いのちのことば社)を出版しました。二〇二四年の「百万人の福音」に一年間連載した三六六日の聖書日課です。
各ページに霊の糧がギュッと詰まった、一ページ五分で読める文庫本サイズです。持ち運びに便利で、バッグに忍ばせ通勤電車で手軽に読むこともできます。各ページ冒頭にはその日の聖書の言葉が記され、続いてショートメッセージ、締めは祈りです。
家庭礼拝やセルグループでの分かち合いにも用いられています。月ごとにテーマがあり、一月は「船出」、二月は「峠越え」、三月は「震災」といった流れに加え、イースターやクリスマスなどの教会暦も織り込まれています。
東日本大震災から十五年が経過する今だから語れるメッセージや、被災直後、わけがわからないなか故郷を後にしたあの日、逃避行で道々出会った忘れ得ぬ人々や、今振り返っても不思議でならない出来事についても記しました。怒涛の日々で流した涙と、その果てに見た信じられない未来についても。
『苦しみの向こうに光あり』は、そんな体験に基づいてつけられたタイトルです。表紙は、暗闇の向こうにほのかに灯る朝焼けの写真を選びました。そしてこの本には、祈ってエールを送り続けてくださった方々への感謝の報告も込められています。
苦しまなかったら知らない世界がありました。苦しみを通して出会った方々もいます。何より孤独だと感じるほどに迫ってこられたイエス様の温もりを、なんとか伝えたいと腐心し、苦闘して綴ったページもあります。
新年のディボーションに、ぜひお用いください。