連載 New Life, New Light 第11回 日常の中にみえるもの

フォトグラファー
辻まき子

三重県在住。東京基督教大学卒業。photo studioハナレ所属。2016年からニューボーンフォトや家族やプロフィール撮影を中心に、その人らしい自然な姿を残せるよう心掛けて撮影しています。
Instagram@maccopiでは日常の写真もご覧いただけます。

 

すこし意外に思われるかもしれませんが、私はカメラマンですが撮られることがあまり得意ではありません。自分の姿を客観的に切り取られることは、どこか恥ずかしさを感じます。写真を見るとき、自分のコンプレックスにまず目がいくのも、多くの人に共通することかもしれません。
ですから「日常写真」と聞いて、生活の中にカメラマンが入って写真を撮られるということに、多くの人が抵抗を感じることもよくわかります。それでも、あえて、私が日常写真を撮ろうとする理由は、そこに映るものに価値を、撮れば撮るほど実感するからです。
写真に映るのは外見だけではありません。そこにいる一人ひとりの存在、暮らし、時代──そして、日々移り変わっていく気持ちや、ほんの小さな変化さえも映し出せる豊かさが写真にはあると感じています。
赤ちゃんが生まれたばかりの家には、ささやかな宝物がたくさん散りばめられています。窓を開ければカーテンが揺れ、電車の音が遠くに聞こえてきます。スマートフォンでやり方を調べ、手元の小さな体を支えながら、精一杯がんばる沐浴。体や心が追いつかない不安の中でも「なんとかこの命を守ろう」とする真剣なまなざし。壁に飾られた上の子の絵や、床に転がるファーストトイ。祖父母の穏やかで優しいまなざしと、みんなで笑い合った集合写真。小さな爪をそっと切る手元にさえも、細やかな愛がにじんでいます。
そんなひと時は、あっという間に過ぎ去っていきます。だからこそ、そのありのままで美しい姿を見つけ、写真に託して、未来へそっと届けられたらと思います。