特集 若い人に薦めたい、伴走者となる一冊
キリスト者学生会(KGK)副総主事 塚本良樹
聖書が読めない?
みなさんは最近、聖書を読めていますか? 聖書を読むのは好きでしょうか?
「最近の若者は本を読まない」と言われることがあります。もちろん全員ではありません。私が接する学生たちや若い社会人たちの中には読書が大好きな方もいます。ただ、「本を読むのが苦手」と言う方はたくさんいます。KGKのスタッフの中にもそのように感じている者もいます。そのなかで、「聖書が難しい」「聖書が読めない」という悩みの声もよく聞きます。
聖書が難しい理由
聖書が難しく感じられるのには、いくつか理由があります。まず、聖書が古代の書物であるため、時代や文化の違いがあること。どう現代に適用して良いか分かりにくいこと。用語が難解であること。自らの偏見・固定概念に気づかずに誤読してしまう可能性もあること。それゆえに解釈が多様であること。豊富な内容ゆえ、相互のつながりをつかみにくいこと。そしてそもそも、文字ばかりであること……。
カラーだからこその視覚的な理解
そんな聖書を読む上で障壁となる「壁」を乗り越えるために、本書は最適な一冊です。まず、なんといってもタイトルのとおり、カラーの図版・地図・写真がたくさん掲載されていることは、聖書を読む上での大きな助けとなります。
本書を通して、知的に聖書の理解が深められるだけではなく、視覚的に聖書を「体験」することができます。私は過去にイスラエルを訪れたことがありますが、その体験によって聖書がリアルに、立体的になりました。本書は、そのように実際に聖書が書かれた場所を訪れる経験に近い感覚を、紙面を通して与えてくれます。
知的な読み応え
その上で、本書には、聖書六十六巻を通読するために必要な知識が詰まっています。本書は大きな書物ですが、まず第一部の「聖書入門」では、聖書全体の流れ、考古学・地理・動植物・暦などの背景知識、解釈の基本、聖書の成立の歴史、現代文化との対話などが丁寧に解説されており、これだけでも読み応え十分です。
さらに、聖書六十六巻の各書物の背景と内容、さらにそれぞれの書物に関連するテーマや人物について、歴史学・考古学・文学・神学などの視点からのコラムが収録されています。知的にも読み応え十分です。
信頼できる執筆陣
しかも、その内容は非常にバランスが良く、学問的にも信頼できるものです。執筆陣は福音主義を代表するメンバーがそろっており、私の母校である米国フラー神学校のゴルディンゲイや、KGKが加盟する国際福音主義学生連盟(IFES)の主事だったラマチャンドラも名を連ねており、読んでいて嬉しくなりました。
あくまでも最初の一冊
もちろん、だからと言って本書の内容をすべて鵜呑みにしても良いという意味ではありません。私自身も、読みながら疑問に思う箇所がありました。これだけの分量があっても、聖書を徹底的に解説するには足りませんから、説明しきれない部分もあったと思います。だからこそ読みながら疑問に思った箇所はさらに調べたり、牧師や信仰の先輩に尋ねたりする必要はあるでしょう。
その意味で、本書は、「聖書って、面白いかも」と感じさせてくれる、そんな最初の一冊として最適な本です。若いキリスト者が聖書についての疑問と向き合う入口にもなりますし、まだ信仰を持っていない人にとっても、教養として聖書を知るために役に立つ内容であり、プレゼントにしていただくのも良いのではないかと思います。
聖書の総合ポータルとして
また、本書はただの書籍というよりも「聖書の総合ポータル」のような存在です。順に読み進めていけば、かなりの知識が獲得できますし、手元に置いておいて、たまにパラパラと読んでも発見があるでしょうし、図鑑のように、必要な時に調べても新しい視点を発見することができるでしょう。グループで読んでも、一人でじっくり読んでも楽しめます。もちろん、価格は少々高めですが、それだけの価値がありますし、教会や宣教団体で一冊備えておけば、多くの人が活用できるでしょう。
若い人がますます聖書のすばらしさを知り、聖書が語る福音に生きる生涯を歩むために、本書は力強い伴走者となってくれるはずです。