特集 戦後八十年、戦争の記憶をつなぐ 平和は、神からのおくりもの

戦後八十年が経ち、戦争体験者の証言に触れるチャンスは貴重なものになっている。生の戦争体験に耳を傾けること、心に刻み忘れないこと、そして次世代につなぐことの大切さを考えたい。

 

絵本『うけとろうへいわ』作者  北島峯子

 

へいわ/どこに あるの/ずっと さがしている/へいわ/どこに あるの/ずっと かんがえている
(絵本『うけとろうへいわ』二~三頁)

 

みみをすますと きこえてくる/「わたしは主 あなたの神」/へいわにであう やくそくのことばが
うけとろう へいわ/「わたしは主 あなたの神」/へいわにであう/やくそくの ことばを  (同書四~五頁)

 

絵本を出版して
絵本『うけとろう へいわ―こどもとおとなに おくる十のことば〈旧約聖書十戒より〉』を自費出版(いのちのことば社発売)した日から、間もなく二年になろうとしています。はじめての絵本制作にとまどいと、購読していただけるものがつくれるかの不安をもちながらの取り組みでした。
ところが発売から約半年後のある日、完売したとの連絡があり、たいへん驚きました。わたしのところにも、再販しないのかと多くの方から要望が寄せられましたが、一歩を踏み出せないまま一年余りを過ごしていました。
今年四月、発売元の出版社より連絡があり、戦後八十年の節目に「いのちのことば社」の出版物として発行したいとの嬉しい連絡をいただきました。
わたしはこの一連の出来事を通して「神の言葉は生きており、力を発揮し、どんな両刃の剣よりも鋭く、精神と霊、関節と骨髄とを切り離すほどに刺し通して、心の思いや考えを見分けることができるからです」(ヘブライ人への手紙4章12節、新共同訳)との聖書の言葉を思い起こしています。予想外に早く在庫がなくなったことも、再販を可能にしてくださったことも、この絵本が素晴らしかったからではなく、「十戒」の一つ一つの言葉が読者ひとりひとりに、深く静かに生きた言葉として語りかけたからだと受けとめています。 
絵本を読まれた方から届いたお手紙のいくつかを紹介します。

 

・先日、福田村事件の映画を見た時に感じた思いが、この本と通じるものでした。関東大震災の時の不幸な事件でしたが、日韓併合という日本の行為が背景にある事件で、他者のアイデンティティを認めない侵略は本当に不幸しか生まないと思いました。
・絵本を母に届け一ページずつ開いて読みました。途中眠ってしまったので机の上に置いて帰りました。その後、間もなく眠ったまま天国へ。翌々日、聖書と絵本を受け取り、聖書は母と共に天国へ。絵本は我が家に残っています。(娘さんよりの手紙。お母様は広島にて被爆)
・わたしの母は長崎で入市被爆。六十三歳でガン性腹膜炎で召天しましたので、平和実現にひとしお思い入れがあります。
・これまで十戒を平和と結びつけて読んできませんでした。たくさんの気づきを与えられました。
・平和を受けとるというのは、新しい視点をいただいたと思っています。

 

再販への期待
現在世界で約六十の紛争が起きていると言われ、多くの人びとの尊い命と平穏な日常生活が一瞬にして奪われています。加えて、経済戦争も繰りひろげられるようになりました。
日本も、日本国憲法九条に反し、二〇一五年には安全保障関連法、いわゆる「戦争法」を成立させ、武力攻撃があった場合に備えるという名目で、戦争のできる国へと防衛・抑止力を拡大しています。わたしは戦争体験者のひとりとして、武力によって真の平和は実現できないと心から叫んでいます。
このような状況のなか、わたしたちはもう平和はこないのではないかと諦めたり、無関心になってしまうことがないでしょうか。
神は御子イエス・キリストをわたしたちの罪の世に送り、神と人との間にかわした愛の契約・十戒を実現しました。イエスは「わたしが来たのは律法や預言者を廃止するためだ、と思ってはならない。廃止するためではなく、完成するためである」(マタイによる福音書5章17節、新共同訳)と語り、ご自身が平和の主であることを示しました。イエス・キリストの十字架への道ゆきにおいて人権、公正、正義、愛を貫かれた平和の主の姿を見ることができます。イエス・キリストの十字架と復活が神からの一方的な「愛」のおくりものであることを知り、うけとるところに平和が生まれると思います。

 

うけとろう へいわ/へいわは 神からの/おくりもの/うけとろう/あなたも わたしも/大きく 手をひろげて          (同書二五頁)

 

ひとりでも多くの方にこの絵本が届き、平和へのかけはしとして用いていただきたいと祈っています。
(八王子めじろ台バプテスト教会会員)

 

親子で読む平和絵本『うけとろうへいわ』

ぶん・きたじまみねこ/え・とばあかし
A4変型判(タテ220×ヨコ210ミリ)・定価1,320円(税込)
いのちのことば社
9歳の時、阪神大空襲で被災、また幼稚園教諭として子どもに向き合ってきた作者の長年の祈りが形となった。前半は子ども向けに、後半は大人向けに書かれている