書評books 「神のかたち」をこの世にあらわす大きな助けとなる書

医学博士/小児外科医 奈良 梓

 


『驚くべき人間のからだ ― 神のかたちとして』
ポール・ブランド
フィリップ・ヤンシー 著
赤木真理子 訳
四六判・定価2,970円(税込)
いのちのことば社

 

本書は、世界中で多くの人に愛されているクリスチャン・ジャーナリストのフィリップ・ヤンシー氏が、彼が自らの「信仰の道しるべ」と慕った医師のポール・ブランド博士の遺志を継ぐかたちで共著出版されたものです。ハンセン病で苦しむ人々に人生の大半をささげ、肉体的そして霊的な「からだ」に向き合い続けたブランド博士は二〇〇三年に天に召されていますが、この本は、ヤンシー氏の情熱と訳者の丁寧な翻訳により、まるでブランド博士から直接講義を受けているように感じられる名著です。
神の似姿としての人、そしてキリストの「からだ」にたとえられるコミュニティ。身体における部分の多様性や協働の重要性についてはよく語られますが、ブランド博士は臓器や細胞レベルの機能と役割にまで洞察を深めています。専門的な内容も博士自身のエピソードとともに活き活きと語られていて、医学的な知識がなくても、自らの身体に備えられている壮大で緻密な神の業に驚き、感動と感謝が自然と湧き上がるのではないかと思います。
ブランド博士は次のように言います。
「もし私たち一人ひとりが、全体との関係で自分が重要であるという事実を学ぶことができれば、そして、各器官が他のすべての器官の価値を認めることができれば、キリストの『からだ』の細胞は、キリストが意図したとおりに行動し始めます」(六八頁)。
私は医学生時代に、生まれて間もない赤ちゃんの手術に立ち会ったとき、赤ちゃんの腸が使命感を持っているように感じて深く感動し、小児外科の道に進みました。信仰が与えられたのはそれから随分後ですが、この本と出合い、私たちの身体は神から託された役割を知っていて、常にその使命を果たそうとしているのではないかと感じました。本書は私たちが各々の「からだ」の価値に気づき、「神のかたち」をこの世にあらわす大きな助けになるのではないかと思います。
多くの方にぜひ読んでいただきたいと思います。