書評books 神に感動し、喜び伝える言葉

日本イエス・キリスト教団 名谷教会 牧師 加藤 満

 


『ニュークラシック・シリーズ 救いは今です』
沢村五郎 著
四六判・128頁
定価1,540円(税込)
いのちのことば社

 

神に用いられた聖徒の言葉を、現代に残された霊的な財産として受け入れ、活用することは価値のあることです。
沢村五郎は一八八七年に生まれ、日本伝道隊聖書学校で学びました。その後、日本伝道隊の要請に応じて御影聖書学舎(現在の関西聖書神学校)を設立し、初代校長として五十年以上にわたり献身者の育成に尽力しました。本書は、沢村が一九三〇年に求道者向けに執筆した「キリスト教案内」を一冊にまとめたものです。
本書は「なぜ人間に神が必要なのか」という根本的な問いから始まります(第1、2章)。沢村は真の神の必要性について詳しく述べ(第3、4章)、罪の持つ悲惨な現実を明らかにし(第5~7章)、キリストの十字架のみが救いをもたらすことを論理的かつ情熱的に語ります(第8~10章)。さらに、神にどのように応えるべきかの道筋を示し(第11章)、救われた者が享受する罪の赦しや新生、復活の希望という恵みの豊かさについても触れています(第12~15章)。多様な例話を用い、読者の現実に寄り添うような語り口は、学識に裏打ちされつつも、一人の魂を求める伝道者の言葉として響きます。
特に印象的なのは、所々に見られる沢村自身の神への賛美です。神について語る際、沢村は神に感動して語るのです。キリスト教を案内することは、単なる知的情報の提供にとどまらず、生ける神への畏れと賛美が伴うべきであることを再認識させられます。
本書は九十五年前の言葉ですが、沢村の時代も伝道が振るわない時期でした。「ああ、全世界は愛の飢饉です・・・このキリストの犠牲の愛のみが人に命を与えます」(74頁)。神に感動し、その喜びを伝える言葉は時代を超えて人々を救いに導くものです。
「昔の人の本」として見過ごすには惜しい一冊です。聖書の文言は「新改訳二〇一七」に変更され、使いやすくなっています。求道者会のテキストとして、また自ら救いの豊かさを再確認する上でも価値のある本です。