書評books 意味深く生きることができる道を示してくれる書
クリスチャン・ライフ成長研究会シニアアドバイザー 太田和功一
『キリスト教の終活のおはなし』
水野健 著
A5判・58頁
定価660円(税込)
いのちのことば社
終活という言葉からどんなことを連想するでしょうか。〝自分の死に対する心の備え〟、〝自分の葬儀はどうしたいか〟、〝遺される家族のためにどんな備えができるか〟、〝遺産相続で家族がもめないために必要なことは何か〟などが心に浮かんでくるかもしれません。確かにこの本には、「自分の死を考える」、「自分の葬儀を考える」、「自分の埋葬、墓を考える」、「遺される人のために」が章ごとに具体的に取り上げられています。
しかし、この本の特徴は、死を越えた復活のいのちの希望を与えられた者として、死に向き合うことを通して、意味深く生きることができる道を示してくれるところにあります。著者はキリスト教の終活をこう説明しています。
「神が『帰りなさい』と言われれば、私たちはこの地上を否応なく去らなければなりません。残された日々をどのように生きたらよいのでしょうか。まず、一度立ち止まって、自分の人生を振り返ることです。そこに神の恵みを見いだすことができれば、残る人生をいかに有意義に生きることができるかを考えることができるでしょう。それがキリスト教の終活なのです」(一二頁)。
また、この終活に必要なものとして、体力、気力、判断力、覚悟に加えて、自分の人生を振り返る静まりと瞑想を挙げていることもユニークです(一四~一七頁)。ここを読みながら思い出したことがあります。壮年期のころに参加したあるセミナーで、自分の半生を振り返りながら、以下の三つの問いを時間をかけて考える課題が出されました。
もし可能なら何歳まで生きたいか。自分の死亡記事に評伝を書くとしたら、自分の人生をどうまとめるだろうか。自分で書けるならどんな墓碑銘を書くだろうか。これらの問いを思い巡らすことはそのころはまだ「終活」という言葉はありませんでしたが、まさしく私にとっての終活でした。
最後に、人生を山登りにたとえた「はじめに」と、食物を味わうことにたとえた「あとがき」は、繰り返して読む価値のある味わい深いエッセイのように感じました。