書評books 聴く者が御言葉に生きるよう配慮した連続講解説教

日本キリスト改革派教会引退教師 岩崎 謙

 

『次世代につなぐ希望の福音 テモテへの手紙第二に聴く』

宮﨑誉 著
B6判・312頁
定価2,420円(税込)
いのちのことば社

 

日本ホーリネス教団鳩山のぞみ教会で語られた宮﨑誉牧師の連続講解説教が、本になりました。我が家に近い田舎の教会で、活気ある礼拝がなされています。
本書ができた背景は、「はじめに」と「おわりに」で説明されています。原語から丁寧に釈義し、原語のニュアンスを伝えています。テモテへの手紙第二をパウロの遺言であるという視座から解釈しています。死を前にしてパウロが語った希望の響きを、本書から豊かに聞き取ることができるでしょう。また、後に残るテモテを思いやる牧会者パウロの姿が描かれています。
本書は宮﨑牧師の説教観に基づく説教です。ほぼ毎回証し人を説教に登場させ、ご自分の体験を交えて語るのは、聴く者が具体的に御言葉に生きることができるようにという配慮によるものです。注解書ではなく説教集だ、という心意気が伝わってきます。
多彩な説教が収録されています。扱う節が少ない場合はキーワード中心の主題説教となり、節が長くなると、手紙の流れが取り上げられます。御言葉から与えられたイマジネーションの翼を広げ、黙想の深まりの中で、御言葉が解き明かされます。このような説教がどうしたらできるのかを思い巡らすと、教派を問わずすべての説教者にとって、本書は自らの説教作成の参考になるでしょう。
テモテへの手紙第二は、晩年のパウロが若い「愛する子テモテ」に書き送った、次世代に福音をつなぐ手紙です。宮﨑牧師は自分をテモテの立場におき、「パウロ先生」と呼びかけています。またパウロの獄中生活と戦時中のホーリネス弾圧とを重ねるのは、霊的な遺産継承の表れです。さらに牧師家庭で育った宮﨑牧師は、折々に出会った先輩教師の言葉を数多く引用しています。信徒から学んだことが、信徒の証しとして紹介されています。
パウロ先生、テモテ、先輩の先生方、信徒の方々、御両親、「祖母・金城愛子おばあちゃん」(二五一頁)から宮﨑牧師につながれてきた希望の福音が、本書を通してしっかりと、次世代に手渡されることを願ってやみません。