連載 リラ結成30年 いつまでも賛美をこの口に 第4回 あなたに呼ばわる 塚田 献

LYRE(リラ)
1993年に東京基督教大学の神学生たちによって結成された賛美グループ。卒業後、コンサート活動をしながら、6人のメンバーは各々のところへ遣わされ、主のみわざに励んでいる。

 

十三年前の二〇一一年三月十一日。未曽有の大震災が東日本を襲った。そのとき僕はブラジルにいて、NHKの衛星放送から伝わってくるニュースを信じられない思いで見ていた。何気ない日常が一瞬にして奪われてしまう出来事にことばを失い、ただ遠い日本のことを思い祈るしかなかった。
そんな中、日本にいる友人の牧師が、詩篇46篇から作った「わたしたちは恐れない」という賛美をYouTubeにアップした。震災後六日目のことだった。「神様は私たちの避難場所 そして力 苦しむ時 苦しむ時 苦しみの時 そこにある助け だから私たちは恐れない」との賛美が心に迫ってきた。まさに恐れや不安、悲しみのただ中にある人たちに、天地を造られたまことの神のうちにある確かな守りと救いを知ってほしいと思わずにはいられなかった。
この賛美に応答するように作ったのが「あなたに呼ばわる」だ。同じ詩篇を読んでいる中で、この賛美の元となる61篇に目が留まった。心が衰え果て叫び祈る詩人の、及びがたいほどの高い岩の上に私を導いてほしいという切なる願いは、まさに私たちと同じ祈りだと思った。苦しみや悲しみの中にある日本の人たちと一緒に、この祈りを神に届けたいという思いで曲を完成させたことを覚えている。
その後、日本にいるLYREのメンバーは、被災した方々に慰めと励ましとなる賛美を届けたいと思い、ミニアルバムを収録することを決めた。僕もこの曲を含めた数曲をメンバーに送った。メンバーが一堂に会することはできなかったが、その後、みんなが歌っている音源がブラジルに届いた。それを聞きながら、自分のパートをICレコーダーに録音し、それを加えてもらってミニアルバムが完成した。それ以来、被災地や様々なコンサートでこの賛美を何度もささげてきた。
人の無力さを思い知るようなときも、私たちは切なる祈りと叫びを「聞いてください」と神に訴えることができる。そして神は小さな私たちを顧み、死さえも私たちを滅ぼすことのできない完全な避け所に導いてくださる。それが主の御翼の陰に住むことである。その聖書が伝えるメッセージは、今も私たちに確かな希望を与えるものだと信じている。
二〇二四年元日。能登半島を襲った大地震。大きな揺れとともに僕が住む町(新潟県上越市)にも津波がやってきた。詩篇46篇の友人の賛美が頭に流れて来た。「私たちは恐れない たとえ地が変わり山々が海のまなかに移ろうとも……」。被災地にあって、今もなお困難と悲しみの中にいる方々に、必要な助けと確かな希望が届けられていくことを心から願う。

 

あなたに呼ばわる
詞/曲  塚田 献
神よ 私たちの叫びを聞き
私たちの祈りを
心にとめてください

私たちの心が
衰え果てるとき
私たちは地の果てから
あなたに呼ばわります

主よどうか
私たちを及び難いほど
高い岩の上に導いて

主よ今 私たちは
あなたの幕屋に
いつまでも住み
身を避けたいのです

まことにあなたは
私たちの避け所
まことにあなたは
私たちの強いやぐら

主よどうか
私たちを及び難いほど
高い岩の上に導いて

主よ今 私たちは
あなたの幕屋に
いつまでも住む
御翼の陰に
© Sasagu Tsukada