さわりよみプラス 名画を彩る Vol.3 今月のお題 「ヤコブのはしご」 #3 #2

ウィリアム・ブレイク
1805年/大英博物館/ロンドン(イギリス)/
ペン・水彩、紙/37×29.2cm

 

この絵は、エサウから逃げるように故郷を出発したヤコブがただ一人で荒野で眠りに就いたときに、不思議な夢を見た場面です。人生で初めて両親から離れ、はるかかなたのハランに向かうヤコブ。そこには孤独と不安と恐怖、また父をだまして兄の祝福を奪い取ったことへの後悔の念がありました。そんなヤコブのところに、神が夢の中で現れました。その夢とは、天からはしご(原語は「階段」とも訳される)が降りて来て、御使いが行き交う情景でした。
ブレイクの作品には、天上の世界が光り輝く黄金色に包まれ、まるで神殿に向かう螺旋階段のようにゆったりと描かれています。その階段はヤコブの寝ている地上にまで降り、御使いたちが優雅な衣装を着て上り下りしています。
ヤコブはこのとき初めて天と地とはつながっていて、神が自分のことを知り、この自分に働きかけていることに気付かされました。神に知られていることを知ることこそ、神を知る機会とされたのです。
孤独と不安の中で夢を見たヤコブは、偉大な神がこんなちっぽけな自分とともにいてくれるという「臨在」の体験をしたのでした。(出典『巨匠が描いた聖書』からの抜粋)