書評Books 私たちの日常で「神学」を「する」

東京キリスト教学園理事長・学園長 朝岡 勝

『日常の神学
今さら聞けない あのこと、このこと』
岡村直樹 著
B6変型判・定価1,650円(税込)
いのちのことば社

「神学」とは私たちの日常とほど遠いもの。そんな声をよく聞きます。しかしどうでしょう。昨今「神学」「組織神学」「教義学」「教理」と名のつく書物の出版が続いています。コロナ禍の影響もあるでしょう。この機会にじっくり思索する。基本から考えてみる。事柄を整理してみる。そんなニーズが高まっているのではないでしょうか。

そんな中で出た『日常の神学』。まず「日常」と「神学」の組み合わせが新鮮です。次に、著者は「神学をする」と繰り返します。「神学」を「する」と動詞で捉え、そしてその中身を「自ら進んで聖書を開くこと」、「真剣に考えること」、「導き出された答えに従って歩むこと」(本文四五頁)と言う。これらは本書の大事なコンセプトです。『日常の神学』という書名に込められた著者の心は、「私たちの生きる日常で神学をする」となるでしょうか。

本書は「教会生活編」と「信仰生活編」からなっています。「教会生活編」では礼拝、献金、教会学校、交わり、奉仕、牧師、信徒、役員のあり方などがやさしく簡潔に記されます。
「教会とご近所付き合い」の項では、「ご近所付き合いの基本はあいさつです」(八九頁)、「掃除も基本です。まずは、教会の前の道をホウキで掃いてきれいにしましょう。しばらくしたら、その範囲をお隣さんまで少し広げましょう」(同頁)と行き届いた書きぶりに目がとまります。

東京基督教大学教授として「ユースミニストリー」「キリスト教教育」「心理学」「人間理解とミニストリー」などを講じる著者の本領が発揮されるのが「信仰生活編」です。「感情と怒り」、「人を赦すこと」、「心の落ち込み」、「不安」など人の心の揺れ動きに寄り添い、「家族関係」、「思春期と成長」、「友人関係」から「結婚」、「働くこと」、「子育てと教会」、「高齢期と信仰」、そして「天国への備え」など、人生のライフステージに寄り添う言葉が続きます。
一人で読むのはもちろん、教会の仲間たちと読み、語り合うのも有益でしょう。そうした「日常で神学する」最良の手引きとして、本書を心からお薦めします!