書評Books 聖書全体のストーリーを教科書のように教える

キリスト者学生会(KGK)九州地区主事 松尾 献

 

『小学生のための聖書がまるごとわかる本』
鈴木崇巨 著
A5判・定価1,980円(税込)
いのちのことば社

教会生活が長くても、信仰でモヤモヤする若者は少なくありません。私もその一人でした。そんな私が、神様の愛がストンと腑に落ちたのは、聖書全体のストーリーを知った時です。アブラハム、ダビデ、パウロ……彼らの名前はもちろん、そのストーリーも知っていました。しかし、私の中で、それらは、未完成のパズルのようにバラバラでした。しかし、聖書全体の流れを知ったとき、それぞれのピースが組み合わされ、「神の愛」という一つの「絵」が浮かび上がってきたのです。

神様に背き続ける民に対して、憐れみと忍耐をもって関わり続けてくださる神様の愛の歴史。聖書全体のストーリーを知った時に、今まで漠然と信じていた神様の愛が、深い確信になったのです。
『小学生のための聖書がまるごとわかる本』は、子どもにわかりやすく聖書全体のストーリーを教えてくれる書物です。著者が手掛けた多くの書物の中でも『1年で聖書を読破する。』は、十二刷も重ね、今でも一般書店で売れ続けているロングセラーです。本書は、いわば、その子ども版ですから、内容はすでに保証済みです。

さらに本書は「子どもたちに『教科書のように』聖書を教える」というユニークな視点で書かれ、様々な仕掛けがなされています。小学生が一人でも読めるように、本文は、小学生の学習漢字のみが使われています。言葉も平易ですから子どもはもちろん、大人も読んでいて、「そうやって伝えればいいのか」と子どもに届く言葉を獲得できます。しかし、それでいて内容は重厚です。旧新約聖書の間の中間時代の背景の説明もありますから、すでに聖書を知っている人も本書を通して聖書の深みへと連れていかれます。

そして本書は、聖書それ自体を指差す書物です。著者は、注意深く聖書の成り立ちを説明し、子どもに伝わるように分厚い聖書をわかりやすくコンパクトにまとめています。読者は自然と「聖書でもっと詳しく知りたい」という思いにさせられるでしょう。著者は、すでにそのことを予想しているかのように、聖書の箇所も紹介しています。配慮に富んだ、どの世代にも届く良書です。