リレー連載 牧師の趣味 剣道

堺育麦キリスト教会 牧師
豊島 守

 

三十歳で献身したとき、自分の楽しみを求めるのは罪だと思い、神様に仕える者として趣味というものを捨てました。まあ極端な信仰です。蓄えも捨てて主に仕えたつもりでした。しかし、神学校を二回も行っても卒業もできず、私は牧師にはなれないと献身の道を委ねました。大きな挫折でした。

それでも信仰は守っていましたが、救われてから十九年通った教会を離れることになりました。自分は、神様に従って一生懸命がんばったけれど……何にもお役に立てていない。そんな悲しみがありました。教会を離れて、人間関係もすべてなくなって、喪失感がありました。

そんな時、ひょんなきっかけで学生時代にしていた剣道を再開することになりました。四十八歳からの再開です。始めたのは夏で、小学生相手にも倒れそうな体力でした。それでもその時、神様は私に自分の趣味、楽しみを持って生きることを許されているし、それを喜んでおられるという確信が与えられました。それから新しい教会に集いながら、剣道にはまりました。ある意味、剣道が私の喪失感を癒やしてくれました。週に六日くらい稽古した時もあります。私は、人間らしさを取り戻したように思いました。がんばるのではなく、自然に喜んで生きてきました。新しい教会に集う中で喪失感も癒やされ、もう一度献身の召しが与えられ、今度は剣道もしながら牧師への道が不思議に開かれてきました。

三度目の神学校を卒業し、六十歳で牧師になりました。遅い歩みです。その間、剣道は私にとって、イエス様以上ではないですが、大きな楽しみです。今も週に一、二回 現役で稽古をしています。無謀にも七十歳になっても七段に挑戦中です。

趣味を持つ、それは私の精神にも体にも大いに助けになっています。昔、趣味を捨てた自分も後悔はしませんが、今はもう少し人間が丸くなった気がしています。

堺育麦キリスト教会
〒593-8327 大阪府堺市西区鳳中町2丁目34−4 TEL:072-263-1989