書評Books 豊かな祈りの世界への誘い

ニューコミュニティ 牧師 小平牧生

『イエスの心で祈る
「主の祈り」』
豊田信行 著
B6判・定価1,320円(税込)
いのちのことば社

味わい深い説教集を発見したら、ミルクボーイではないが「ありがとうございます。こんなん、ナンボあってもいいですからね」と言いたくなる。その中でも、「主の祈り」の説教集は特別だ。書棚には何冊もの「主の祈り」の説教集があるが、そこに大切な一冊が加わった。

著者の豊田くん(と、いつも呼んでいる)と知り合ったのは、二十年も前の夏のこと、友人の紹介によってであった。サンダルとショートパンツにグラサンで、ニヤニヤしながらやってきた。コーヒー片手の牧会談義に意気投合して、その結果、ハワイにまで遊び(研修?)に行くことになったのだ。

最近の豊田くんの活躍には、傍で見ていても目を見張るものがある。二つの教会の牧師としてだけではなく、次々に書籍を著し(画集も出るかも)、企業のコンサルタント、牧師の研修、その取り扱うテーマも霊性から、リーダーシップ、説教、そしてエクササイズと幅広い。最近はパーソナリティーにも手を出しているようだ。そういう豊田くんの豊かさが、この説教集にはいたるところに満ち溢れている。初めて聖書を読んでみようという方から、私たち牧師にまで、それぞれの読者の期待と必要に応えてくれる、そんなお薦めの書物だ。

ご存じのように、「主の祈り」は、主が弟子たちに教えてくださった祈りである。そして同時に、主ご自身が祈られた「主の祈り」でもあるだろう。私たちは、この説教集に収められた一節一節の祈りを通して、祈られるイエスに出会い、そしてイエスの心で祈る祈りへと導かれていく。コロナ禍のために教会堂に集まることができず、はからずも「家の中の隠れた部屋に閉じこもって」礼拝をささげる人たちがおられるだろう。そういう私たちが大きく息を吸って、そして豊かな祈りの世界へと導かれていく。この説教集はその助けとなるにちがいない。

豊田くんは、遊ぶのが好きだ。彼はこの本にも遊びを加えている。この説教集を手にする人は、その遊びによってもイエスに出会うことができるだろう。