書評Books そうだ、本を贈ろう

日本イエス・キリスト教団 西宮聖愛教会 副牧師 鎌野喜恵子

『生きるのが楽になる聖書のことば』
フォレストブックス編集室 編
B6変型判・定価1,210円(税込)
フォレストブックス


『名句で読む聖書』
フォレストブックス編集室 編
B6変型判・定価1,100円(税込)
フォレストブックス

小学生の頃、クリスマスに贈られた岩波少年文庫で、わくわくドキドキしながら主人公たちと冒険を楽しみました。

牧師であった私の父は七十六歳で亡くなりましたが、数か月過ぎた頃、礼拝中にふと「もう父が講壇で語ることはないんだ」と思い、知らないうちに涙を流していました。その夜、以前友人から贈られた絵本を手にとり読み進める中で、父なる神様の永遠の愛に慰めをいただきました。

誰かに本を贈るときは、その人の興味や今抱えている悩みなどへのヒントになるようにと、本を探します。本のプレゼントは、手にしたときに一気に読むことも、時がたって、ふと手にとって頁をめくり、そのひと言が心に響くこともあります。賞味期限はかなり長いです。

このたび、プレゼントにお勧めの書籍が二冊刊行されました。どちらも手に取りたくなる美しい装丁です。

『名句で読む聖書』は、まず聖書全体を数行で的確に表します(二頁)。旧約聖書からは、まず世界の起源を「はじめに神が天と地を創造された」と語り、その場面を見事な壁画に描いたミケランジェロを紹介(一〇頁)。新約聖書から、中心となるイエスの本質を「初めにことばがあった」と述べ、その「ことば」を表す最古の日本語訳聖書を描く三浦綾子著『海嶺』を紹介します(五四頁)。

聖書の名句が四十五句選ばれ、それぞれにミニ解説と著名人や文学・芸術などのエピソードが添えられています。伝道者の書三章の「すべてに時がある」。だから神の摂理に耳を傾けないかと語りかけ、ヒルティの「すべてのものは成長するのに時間がかかるということである。……ただ人間だけがいつもせかせかと急ぐ」と、ピリッとした一句を引用します(四一頁)。イザヤ書五三章の「受難のしもべ」から生まれたヘンデルのメサイア、ハンセン病患者に寄り添った医師・神谷美恵子の詩「何故私たちでなくあなたが?」を紹介しています(五一頁)。

『生きるのが楽になる聖書のことば』は、見開き右の頁で聖句一節を力強く掲げ、左の頁で時にはソフトに、時には少し斜めから、「人づきあいの極意」「賢い財産の運用法」「怒りのコントロール」「活力ある組織をつくる知恵」など、エッセイを述べています。巻末の、聖書から影響を受けた著名人らの話も興味深く読みました。

先の書は一頁に聖書を五~六節取り上げ、前後の状況も含めてじっくり味わえます。後の書は一頁で聖書の一節を掲げ、核心をついて力強く語りかけています。

一見すると個々の断片的な名句の紹介のように思われる構成も、じつは聖書の全体が浮かびあがるように選ばれています。木を見て森全体をわかったつもりになってはいけませんが、森全体を理解することは一本の木を見ることから始まります。

「宗教絵画を鑑賞し、その背景を知りたくて聖書を読んだが、さっぱりわからなかった」という未信者の声を聞いたことがあります。そのような方に贈りたい本です。病床にある方々にも、頁毎に完結しているこの本は読みやすいでしょう。遠く離れた友人への手紙と共に送るのも一案です。
聖書に影響を受けた古今東西の有名人のなかに、若い世代に馴染みのある人たちもさらに加えられていたら、もっと良かったのにと思いました。

最後に、コリント人への手紙第二、四章からヘレンケラーの言葉、「見えないものこそ永遠」ということを聖書に発見し、「聖書を読むうちに、喜びと感銘は深まるばかり」(『名句で読む聖書』九一頁)。本当に、聖書は読めば読むほど喜びと感銘が深まっていきます。その一歩となるよう、祈りをこめて贈りましょう。

本書を通して、聖書への親しみが生まれ、「人を生かすいのちのことば」である聖書に出会い、先が見えない不安の中から光を見いだす方が起こされますように。