書評Books 教会本来の姿を回復するには

東京聖書学院教頭/東京ミッション研究所総主事/日本ホーリネス教団・川越のぞみ教会 牧師 西岡義行

今日の日本の教会や神学校は、少子高齢化の波を受け、閉塞感を抱えつつ社会から孤立していく流れをとどめ得ないという危機的状況にある。本書は、今のまま「パラダイム転換」せずに継続することは許されないとして、この課題に真摯に向き合う。実際に、教会や神学校において共有されてきた神学や実践を無意識の次元で支える前提に光を当て、今までの枠組みとは異なるものを提示しつつ、現行のあり方にチャレンジしている。とはいえ、抽象論で終わらない。著者は教会の牧師として、神学校の教師として現場に身を置きながら、教会の長い歴史の中でいつしか逸脱してしまった私たちの考え方や信仰の捉え方、さらには実践の枠組みに警鐘を鳴らしつつ、本来初代教会の家にあった生き生きとした包括的な宣教のあり方に立ち戻っている。

本書は、著者が経験した三つの衝撃がその背後にある。第一に、西洋のキリスト教社会で構築された学校様式による専門的神学教育に疑問をもち、聖書の時代にあった「知恵の伝統」に戻り、信仰共同体の生活の中で次世代を育成するあり方へと転換を決断し、二〇〇五年に実際の神学教育に改革を断行したことである。

第二に、「東日本大震災」の衝撃が、教会やキリスト者の在り方をその根本から問う契機となったと述べている。「支援のための支援」「人道支援に終わっていいのか」あるいは「宣教のための支援なのか」を問う中で、「良いわざ」を実践する福音に基づく共同体の存在がいかに重要かに光を当てる。そして、支援を超えて、地域にとって祝福となる共同体の存在意義と実践を具体的に述べている。

第三に、信仰継承の深刻な課題に取り組む中で、教会を維持するためではなく、本来神の民が何のために召されているのかに目を向けることへと挑戦する。福音によって「神のかたち」を回復した共同体が、その町や地域、さらには国や地球村の繁栄に寄与・貢献できる「祝福をもたらす」存在となるという包括的な視点で宣教を捉え直している。聖書に根差しつつ教会や信仰生活の具体的な実践に光を当てる本書が、多くの方に読まれることを願っている。

『教会・神学校に迫られるパラダイムの転換』
森谷正志 著
四六判・定価2,640円(税込)
いのちのことば社