書評Books 心の声と思いに耳を傾ける

日本同盟基督教団・蛍池聖書教会 牧師 森田悦弘

昨年よりのコロナ禍の影響によって、教会の活動が減少しています。それを機に、今までの働きと奉仕を見直しています。良かれと思ってやったことが相手の必要にどの程度応えていたのかと問い直すことも数多くありました。「何をするのか?」「何を語るべきか?」と自分自身の能動的行為に重きが置かれ、相手の話に耳を傾けつつ、心の奥にある声や思いを聴き取っていなかったようにも思います。

以前、同じ関西出身の先輩牧師より「牧師とは魂の医者やで」と言われ、妙に納得したものの、現実問題として、それでは相手の魂の状態をどれぐらい理解できているのか、理解できるほどの関係が築けているのか、そもそも関わる自分自身のことがどれぐらい見えているのかとも問われます。牧師として今まで説教や諸集会、病人訪問や時には冠婚葬祭の司式等々、いわゆる宗教的な働きやケアはそれなりにしたと思いますが、スピリチュアルケア(魂への配慮)に関しては欠けがあったように思います。そして、スピリチュアルケアを抜きにした宗教的働きやケアは仕事化され、豊かな実を結ばないようにも思うのです。

ここにスピリチュアルケアの分野の第一人者による本書が出版されました。著者は長年、キリスト者として大学と大学院での研究者、教育者であり、またホスピスのチャプレンとして豊かな臨床経験を持ち、かつ牧会者として教会での奉仕に携わってきました。本書は、ある神学校での著者のスピリチュアルケアに関する講演と講演後のディスカッションが編集を経て、出版されたものです。

この書を読むとスピリチュアルケアについて学ぶことができ、深い人間理解の力を身に付けることができます。また、人と心と心でつながる関係力を高めることもできます。講演後のディスカッションも質疑の中で著者が放つ問い、応答が人への関わり方の貴重な学びとなります。まるでスーパーバイザーから指導と支援を受けているようなものです。著者は後に続く者のために豊かな経験から惜しみなくスピリチュアルケアに関する知識、知恵を与えてくれています。牧師だけでなく多くの教会の奉仕者に一読をお勧めいたします。

『スピリチュアルケアと教会』
窪寺俊之 著
B6判・定価1,650円(税込)
いのちのことば社