書評Books 次の聖書翻訳を見据えて学ぶ

日本長老教会・久我山キリスト教会 牧師 敦賀章博

 

『みことば  聖書翻訳の研究 第2号』
新日本聖書刊行会 編
A5判・定価1,100円(税込)
いのちのことば社

本書は、聖書翻訳に貢献することを目的としたモノグラフ(研究論文)の第2号です。掲載されている論文は四本で、いずれの論文も読み応えがあります。

想定されている読者は、聖書翻訳に興味があり、聖書原語(ヘブル語、ギリシア語)を学ぶ研究者や神学生でしょうか。次の聖書翻訳を見据え、新改訳の翻訳理念が継承されることがこの本の目的ですが、著者らの聖書原典に取り組む姿勢から多くを学ばされ、説教者はもちろん、聖書翻訳について一家言ある方は必読と言えるでしょう。聖書原語の知識がなくとも読むには読めますし、理解できる部分から発見できる何かはあると思います。

けれども残念ながら、一般信徒向けではありません。ですが、もしかしたら、記号の羅列にしか見えないヘブル語やギリシア語に興味を持たれ、原語で聖書を学ぼうとする人、次の翻訳に関わる研究者が起こされることが期待されているのかもしれません。そのためには、ぜひ、本書を教会図書に加えていただきたいと思います。

さて、肝心の内容ですが、最初の論文、「Ⅱテサロニケ1・12でθεὸςはイエス・キリストにかかるか」は、「この箇所を『神であり主であるイエス・キリスト』と訳すとすれば、たしかに新約聖書における唯一の例となる」(本文一二頁)という、挑戦的な翻訳の論証となっており、大変興味深く読めますし、学生は論文の書き方を学ぶこともできるでしょう。

また、続く論文では、新約にある旧約聖書からの引用について、使徒15章16〜18節を例に、アモス書からどのように引用、翻訳されたか丁寧に説明されています。これを読めば、新約聖書からの説教準備に役立つ示唆がきっと与えられるでしょう。

さらに、「聖書ヘブル語における『奪うこと』に関わる語の整理」「µluを例にして扱われる類義語の区別化について」という論文に、原文が透けて見えるように翻訳するという理念からくる、飽くなき探究心が見えるようです。