書評Books 内容は固く、語りは柔らかいキリスト教弁証論の入門書

サンディエゴ日本人教会 教会員/ 理学博士 石塚雄司

 

『科学ですべて解明できるのか?  「神と科学」論争を考える』
ジョン・レノックス 著
森島泰則 訳
四六判・定価1,650円(税込)
いのちのことば社

長年海外に住む一人のクリスチャン科学者の私から見た日本は、伝統と最先端技術、宗教と科学といった一見両極端の思想が当たり前のように共存している不思議な世界だ。

その環境で「科学ですべて解明できるのか?」という問いに「できる」と断言する人は、信仰があるなしにかかわらず少数だろう。だが、具体的に科学で何が解明できないかと問われて、はっきり回答できる人は多くはないだろう。

本書は、このシンプルだが大切な問いに私たちを真摯に向き合わせてくれる。著者ジョン・レノックス博士はオックスフォード大学で数学の教鞭をとり、世界中の主要な大学で講義してこられた。本書はその彼が、科学とキリスト教の関係に焦点を絞ったキリスト教弁証論の入門書である。

前半は「神と科学」論争の歴史、科学の本質と限界、科学とキリスト教両方に対しての誤解について解説しているが、歴史や科学の授業、また教会でもなかなか聞けない目から鱗の内容と言える。

一つの例で、科学も信仰を土台としており、「キリスト教の信仰は実に理にかなっている」という主張は、私自身一人の科学者として非常に共感でき、科学主義が蔓延する時代に生きる読者にも、きっと社会と対話する視座を見いだす手がかりを見いだせるのではないかと思う。

後半は、聖書が信頼できるその理由について語る。聖書が、科学では答えることのできない領域に対してメッセージを語っていることを、著者自身の体験やたとえを織り交ぜながらわかりやすく説明してくれる。語る内容は固い弁証論だが、それを感じさせない親しみやすい語り口は読んでいて疲れない。

説明がもの足りないと感じる部分(創世記、悪の問題)もあることは否定できないが、これほどの内容を邦文二百ページ以下に簡潔にまとめてくださった著者に感謝したい。

科学とキリスト教の関係について、もっと知りたい方、聖書を疑問に思っている方、そして特に科学を志す人に読んでもらいたい一冊として推薦したい。個人で読んでもよいが、皆さんの(リモート)スモールグループなどのディスカッションのテキストに使ってみてはいかがだろうか。