書評Books スピリチュアルケアの本質が学べる指南書

日本伝道福音教団・鶴瀬恵みキリスト教会 牧師/聖学院大学総合研究所特別研究員 堀 肇

 

『たましいの安らぎ 病院チャプレンの歩みより』
藤井理恵 著
B6判 1,400円+税
いのちのことば社

 

スピリチュアルケア(たましいのケア)は、キリスト教世界では従来パストラルケアの中に含めて実践されてきたものですが、近年はWHO(世界保健機関)の健康規定の見直しの中で、定義や実践手法もかなり幅のあるものとなってきました。スピリチュアリティ(霊性)の理解やケアの実践において宗教性を含めないものもある、というのが現代のスピリチュアルケア事情です。

著者の藤井理恵先生は、そうした諸事情を十分承知の上で、牧会者としての立ち位置を明確にしておられるという点で、本書は安心してスピリチュアルケアについて学べる指南書といってよいでしょう。

さまざまな背景をもつ病者の傍らで「押しつけることなく、また相手を操作しようとすることなく、自分の中にある神との関係を語る必要があります」(本文一七八頁)と述べておられますが、これはキリスト教病院のチャプレンだけでなく、教会の牧師の基本的な姿勢でなくてはならないと納得させられる一言です。

本書には、藤井先生がこうした立ち位置に立って、淀川キリスト教病院のチャプレンとして臨床牧会・伝道の現場で習得された理論と実践の知見が数々記されています。人間存在の厳しい苦悩の現場を踏んでこられたことがすぐわかる本です。

本書の中心部分は「たましいのケア」と「たましいの安らぎ」ですが、ここには生死の狭間にある人たちとどのように関わるべきか、ケアのプロセスについて丁寧に書かれ、その実践例として七人の「答えを見つけた方々」との会話記録も載せられています。

さらに病院の礼拝での「聖書のメッセージ」などは、人生の苦悩・心の痛みのわかる説教です。最後の「死を前にした人と関わる牧会者(チャプレン)のために」には、教会の牧師が繰り返し学び修練しなくてはならない「臨床牧会知」が綴られています。一読・再読して、これからの日本の教会のために、大変良い本が出たと思いました。