書評Books 問いを変えなければ

日本同盟基督教団・徳丸町キリスト教会 牧師  朝岡 勝

 

『中高生に信仰を伝えるために』
川口竜太郎 著
B6判 1,000円+税
いのちのことば社

 

若い世代に信仰を伝えるためには「どうしたらよいのか?」 彼らが教会に魅力を感じるためには「どうしたらよいのか?」 多感な中学生、高校生たちと関わるには「どうしたらよいのか?」

この問いを前に立ちすくむ私たちにとって、きっとこの人に聞けば答えが出るはずと思える「頼みの綱」の存在、高校生伝道団体hi-b.a.の代表スタッフの著者による本書は、手に取りやすいサイズ、ズバリ直球のタイトル、目を惹くイラストで、そこにいくつもの斬新なアイデア、具体的なノウハウ、聞きたかった問いへの答えがあると期待させます。

しかし、読み始めてすぐに出会う言葉です。「読んでいただければすぐおわかりになると思いますが、高校生集めの『手法やノウハウ』が紹介されているわけではありません。高校生伝道に関する知識や情報が記されてはいますが、いわゆる人を集めてイベントを行い続け、高校生を引き止め続けるためのテクニックとは違います。…… 彼らの将来を見据えて、中高生世代の一人一人がキリストご自身に、しっかりとつながっていくような信仰成長を願います」(本文五頁)。

こうして記される本編を読み進めていくと、派手な一発狙いでなく、地味に地道に継続的に関わり続けることの大切さを示され(1章)、中高生世代を知り、受け入れ、寄り添い、励ますことの重要性を教えられ(2章)、彼らの世代特有の文化の功罪、彼らを取り巻く環境の困難さ、複雑さ、過酷さを知らされ(3章)、彼らの居場所となっていくために、教会挙げて態勢を整えていくことの必要性を痛感させられます(4、5章)。

「どうしたら? どうしたら?」との問いは切実であっても、その問いを変えなければ彼らには届かない。むしろ、私たちがどのような存在になるかが問われているでしょう。熱い心と冷静な頭で、神の国の建て上げという大きなゴールを見据えて励む。そんな勇気を与えられる良書を感謝します。