書評Books 愛に生きるために必要なこと

インマヌエル高津キリスト教会 牧師 藤本 満

 

『大事なのは、愛によって働く信仰 ガラテヤ人への手紙・ヤコブの手紙講解』
村瀬俊夫 著
B6判 2,000円+税
いのちのことば社

本書は、著者自身が開拓し、五十年牧会してきた蓮沼教会での連続講解説教をまとめたものです。著者がガラテヤ書の連続講解に初めて取り組まれたのが一九九九年。それから再度取り組んだとき、「私の理解や洞察も深められてきました」(三二頁)と記します。ですから本書は、長年思索してきたことの集大成と言ってもよいでしょう。

本書の最大の魅力は、新約聖書でいつも対立的に論議されてきた、信仰を強調するガラテヤ書と、行いを強調するヤコブ書を連続して扱っているところにあります。著者は、両者の調和性・補完性をガラテヤ五章六節の「大事なのは、愛によって働く信仰」論に集約させています。私たちが信仰をもって福音に聴くとき、キリストが与えてくださる聖霊の受領者となり、その聖霊が私たちを義認の恵みにあずからせ、聖化の生活へと導いてくださる、と(二九頁)。信仰告白は言葉だけのものでなく、「神に生きる」ことで聖霊に導かれ、愛の実を結ぶことによって明らかにされます。その意味で、愛に生きることを具体的・日常的に教える「ヤコブ書は……ガラテヤ書とともに、重要視されて然るべきなのです」(三一八頁)と著者は語ります。

著者は新約学・神学の学者ですが、その本領を発揮したのが講解説教であろうと評者は感じます。緒論や釈義や神学の詳細もわかりやすく記されていますが、なんといっても愛に生きること、そのためのデボーションの強調が随所に見られます。「たましいを動かす修練をしないと、霊性が枯渇してしまいます。……(デボーションの)中身とは、こうしなければならないというマニュアルではなく、イエス様との親密な交わりです」(二六四頁)。これは、ヤコブ書からの説教「舌を制することができるか」の一節ですが、同じ強調がガラテヤ書の「互いの重荷を負い合いなさい」の説教にも見いだされます。傲慢にならないために、「自分が取るに足りない者であると見る修練を、日々新たに重ねていくことです」(一八八頁)と。

本書を読む者みなが、走るべき道のりを最後まで勇敢に走り抜く著者の姿に刺激を受けることを確信しています。