書評Books 福音に根ざす「弟子化」とは

東京基督教大学 特任教授 倉沢正則


『ラディカルな信仰者への旅 イエスの生き方にならう』
エドモンド・チャン 著
ローレンス・綾子 訳
四六判 1,200円+税
いのちのことば社
本書の原題は、『ラディカルな弟子化―五つの決定的な質問』です。ですから、日本語の題名は、著者の主張を端的に表しているといえます。本書は、五つの決定的な質問をもって、弟子化について「明確に」解き明かします。
特筆すべきことの第一は、「ラディカル」という言葉です。著者は、それをラテン語の「根」を意味する言葉から派生した、「革命的、本質的、根から発するもの」として、「イエス様はラディカルでした」(六頁)と本書を始めます。
その根本にあるのは、「私について来なさい」と言われたラディカルな主イエスご自身へのラディカルな忠誠への召しにあるというわけです。ラディカルな弟子化にはラディカルな聖さと謙遜さ、そして高潔さが必要であると。これこそ、イエス様の道として示されるところに説得力があります。
第二は、陥りやすい「弟子化」についての誤った理解への指摘です。かつて「弟子化」という用語がキリスト教界で用いられ、近年では「弟子訓練」という用語を盛んに見ます。そして、さまざまな弟子訓練プログラムやカンファレンスが紹介されるようになりました。しかし、著者は本書で大胆に、そのようなセミナーやセッションをより多く受けることで「真の弟子になれる」と思い込んではならないとはっきりと告げます。それらを人生に適用してこそ、霊的成熟さ(弟子化)を生み出すのだと。ですから、本書は今一度、福音に根ざした弟子化について再考を促すものだといえます。
第三は、まさに彼の主張点である「イエスの生き方にならう」ことこそ、ラディカルな弟子化の目指すところだということです。そこでは「完全な明け渡し、自己鍛錬、聖霊の力」が必要で、この内面の成熟が単に個人的な変革(トランスフォーメーション)にとどまらず、社会や世界の変革へとつながる宣教の原動力となるという確信です。「贖いの旅路としての弟子化」こそ、福音に根ざす弟子化のあり方だとする著者の主張に賛同せざるを得ません。