297 時代を見る眼 発達障害を知る [3]発達障害と二次障害 ―知っておきたいこと―

臨床心理士・公認心理師 森 マミ

発達障害には生まれながらの特性がありますが、その特性による生きづらさに適切な支援が得られず、ストレスを体験し続けることによって、二次的な問題が発生(多くは思春期以降に出現)してきます。
「不登校」の背景に、発達障害が見え隠れするケースは少なくありませんし、また、周囲の無理解は「いじめ」となって現れています。これらは深刻な問題で、将来的にもハイリスクです。
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ASD(自閉症スペクトラム障害)は、「対人関係」がうまく築けず、「感覚過敏」を含めた「こだわり」を有するのが特徴ですが、その多くの人が「孤独・孤立」の問題を抱えて苦しんでいるという現実を知っているでしょうか。居場所を求めて彷徨っているのです。最も頻度の高い二次障害は「うつ病」だといわれています。また「統合失調症」のような症状を呈することがあり、これは鑑別が難しいようです。
AD/HD(注意欠如・多動性障害)は、忘れ物が多かったり注意が続かない「不注意」の問題と、落ち着きがなく、順番を守れなかったり、ついカッとなって暴言や暴力が出てしまう「多動性・衝動性」の問題を有するのが特徴です。叱られ続けた子どもは非行に走る傾向があり、リスクとしては「躁うつ病」や非行関連の障害である「素行障害」(動物や人を傷つける等)が挙げられます。
LD(限局性学習障害)は、知的な遅れはないものの「読み・書き・算数」に困難さを示すもので、実は最もわかりにくい発達障害といえるかもしれません。「学業不振」というかたちで現れてきますが、「文字の輪郭や単語を音のまとまりとして認識できないこと」=「理解できない」ということではなく、学習法を工夫すれば学習成果が期待できます。しかし、本人は「自分は馬鹿だ!」と思い込み「自己肯定感」が著しく低くなっているのです。
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これらの二次障害から子どもたちを守るのはだれでしょうか。それは、「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している」(イザヤ43:4)という声を聞く人でしょう。
ありのまま愛されていることを知る人は、他の人もまたありのまま愛されていることがわかります。
さらには、発達障害の生きづらさはだれかの痛みに寄り添うための神さまからの贈り物であることを、共に本気で信じることが、二次障害の予防や支援の根底になければならないのです。