書評 彼女を突き動かしている信仰の力に心打たれる

『希望の歌と旅をして』
森 祐理 著
B6判 1,400円+税
いのちのことば社

 

淀川キリスト教病院 理事長 柏木哲夫

森祐理さんとはこれまでに何回かご一緒に奉仕したことがあります。
祐理さんに対する私の印象は、明るく、元気で、しっかりされている、というものです。その「しっかりさ」は彼女の信仰から来ていると私は確信しています。
その祐理さんがこのたび素晴らしい本を出されました。書名のとおり、世界各国を歌の旅で訪問するというとてもユニークな働きの中で、訪問した先々の体験したことの報告と証し、そして魅力的な写真が本書の中心となっています。東日本大震災被災地への百回を超す訪問をはじめ、ブラジルの農場、中国四川省の地震の現場、カンボジアの貧しい村々、台風後のフィリピン、ルワンダの子どもたち、ネパールの教会、震災ごとの台湾への訪問など、大きな自然災害、政治的・経済的な問題を含む貧困を抱えた国々、その問題の種類は違っていても祐理さんの訪問先にはすべて「慰めと励まし」が必要な人々がたくさんおられました。神様はそのような人たちのために祐理さんを「慰めと励ましの大使」としてお遣わしになったのだと思います。
神様からいただいた賛美の器としての使命に献身され、国内外のどこに行かれても全身全霊で賛美されているお姿をご存じの方も多いと思います。読む者にその国々の状況を思い描いて感動の涙を起こさせ、彼女を突き動かしている信仰の力に心打たれました。
祐理さんは阪神大震災で弟さんを失いました。悲しみから立ち直る過程で祐理さんの賛美に霊的な深さが増し加えられてきました。二〇一六年六月、最大の支援者であり理解者であった愛するお父様は本書の完成前に召されました。大切なご家族との死別という悲しみを乗り越えて、本書は主の証人として活動を続けられる著者の信仰に励まされ、また祐理さんとともに旅してそこにおられる人々とあたかも交わっているような感じを受ける素晴らしい本です。手に取ってぜひ一読されることをお勧めします。