時代を見る眼266 変わりゆくものと変わらないもの [2] 遅れた医療事情と霊的無知による悲劇

日本国際飢餓対策機構(JIFH)
ボリビア多民族国駐在スタッフ
小西小百合

 

私は昨年約一か月半腸チフス他の感染症で苦しみ、日本に一時帰国して精密検査を受けました。そのときわかったことはボリビアで受けた治療や検査方法・薬が、日本では10~15年以上前のものであり、現在日本ではその検査の器具・薬自体製造されていない古いものであったということです。また抗生物質過剰投与の弊害が出たこともわかりました。今回命に関わる大病や手術でなかったことを神様に感謝したと同時に、世界が加速度的に変わっていく中で、そこから取り残されたボリビアの特に僻地に住む貧しい人々の暮らしと厳しい現実を思わずにはいられませんでした。
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2016年4月、ボリビアで教育支援していた13歳の里子・ダビッド君が病気で亡くなるという悲しい出来事がありました。彼の村はアンデスの標高約3,300mの高地アサワニ地域にあり、古くからの迷信や土着信仰、男尊女卑(マチズモ)などが根強く残る地域です。特に僻地に住む多くの人々は、いまだに薬草以外の薬や医者を信用せず、医者に頼ることは神様への不信仰ととらえ、祈りのみで治療するべきだと考える人が多いのです。
そして彼の両親も例外ではなく「息子は悪霊にとりつかれて病気にかかったのだ!」と考え、今年1月頃から体調不振を訴えて日に日に症状が悪化し両脚も腫れあがってきた息子を医者に連れていかず、医者に診せるようにと強く勧める私たちスタッフの説得を断固として拒否しました。
家族全員で村の小さなキリスト教会へ通っていたのですが、創造主なる神様にも頼ることなく呪術師に解決を求めたのです。ダビッド君はどんなに痛く、苦しかったことか! 助かったかもしれない尊いいのち。本当に心が痛みます。
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私たちキリスト者は、人々がこのサタンの偽りから解放されるために祈ると同時に、真理を伝えるために主の手足となって働かなければならないと痛感しています。そして神様ご自身が働きかけてくださり地域の方々の霊・こころの目が開かれて、価値観が変革され、ボリビアでまた世界でこのような悲しい出来事が繰り返されないように、そして子どもたちが一切の悪しきものから守られて健やかに育っていくことができるように、心から祈らずにはおられません。